ITproでは、ITパーソンのこころの病の実態を明らかにするために、「ITパーソンのメンタルヘルスに関するアンケート」を2010年3月30日~4月7日に実施し、約4000人の方に回答していただいた。アンケート調査の結果は、「特集 ITエンジニアのメンタルヘルス」で紹介しているので、そちらをご覧いただくとして、ここでは、アンケート回答者からいただいたコメントを抜粋して紹介しよう。

上司のパワハラが大きな原因

 今回いただいたコメントで非常に目立ったのは、「こころの病にかかる大きな原因は上司にある」という意見だった。

  • 同じ上司の下から何人もこころの病に陥る例が多い。そうなると、その上司に問題があることとなり、上司が何らかの指導を受けてもよいはずなのに、教育している形跡はなく、相変わらずそのチームからこころの病に陥る人が多い。上司が恫喝したりするので、常に不安である。また、こころの病に陥った人=使えない人だと言われたことがある。「あなたはこの会社には合わないのだから、他を考えなさい」と退職強要までされている。(35歳、プログラマ、男性)
  • ただの短納期化や低価格化だけではなく、それによるプレッシャーと上司からのパワハラによるメンタル疾患が、弊社では非常に多い。単に時間外労働の多さだけではメンタル疾患にはならないと思う。人間関係、おもにプレッシャーやパワハラによる疾患者が非常に多く見られ、弊社は崩壊寸前である。(40歳、プログラマ、男性)
  • 今まで、こころの病とは無縁と思っていたが、上司のマネジメントスキル次第ではすぐにこころの病になれることを、転職して4カ月で思い知った。また、他のメンバーからすでに退職したメンバーの話を聞くと、その上司の下で心を壊して辞めていった気配もある。会社にはマネジャーに昇格させる時にマネジメント研修を受けさせる体制をとってほしいと思っているが、そもそも研修などという短期的な利益につながらないことに費用を出さない体質の会社なので、全く期待もできない。(35歳、プログラマ、男性)

 このように「こころの病の原因が上司にある」とする意見が多いのは、マネジメントスキルの乏しい人が管理職やマネジャーになっているケースがめずらしくないためだろう。

  • この業界は管理職としての能力の無い人が年功序列的に管理職になっていく構造的問題が根本原因だと思います。給料は管理職にならないと上がらないし、プログラマやスペシャリストといった職種で職業人生をまっとうできない商習慣から是正していかないと解決できないと思います。(46歳、コンサルタント)

顧客との折衝やクレーム対応が重荷に

 今回のアンケートでは、「横暴な顧客の存在が、こころの病を引き起こしている」と指摘する意見も多かった。顧客の要求通りにシステムを開発する受託開発では、顧客の要求は“絶対的”。このため、顧客の存在が大きなプレッシャーとなるケースが多いようだ。

  • 周囲にこころの病にかかったことがある人が多数います。残業などの勤務時間によるものもありますが、大半が顧客先からの苦情や、顧客と自社の接点としての板挟みによる、精神的な疲れのようです。(25歳、保守/サポート、男性)
  • 周辺の例では、もともと純粋に技術が好きでSEになったという人に、顧客との折衝や、クレーム対応などが重荷となりこころの病にかかるケースがあるように思う。1つの要因として、ベンダーを対等に扱わない一部顧客の存在があると思う。本来、顧客とサービスの提供側には、上下関係は無いはずであるが。(45歳、SE、男性)
  • 契約などのガイドラインを作って、お客様の横暴を許さない制度が必要ではないか?顧客要件に起因するものが多いと感じているためである。(44歳、SE、男性)

 上司や顧客との関係に加えて、過重労働も相変わらずこころの病の大きな原因となっている。

  • 実際に2年間休職していて復帰しました。現在は残業しないように心がけています。以前は月に80時間程度の残業が1年ほど続き、心身ともに壊してしまいました。国内の大きな企業におりますが、どうしても「努力・根性」論が重用されますし、結果論として残業時間が仕事のバロメータとなります。出世するには残業時間を稼ごうとする風潮すら感じられます。この会社にい続けると同じようにまた体を壊すことになると考えていて、次の職を考え始めています。(29歳、SE、女性)
  • うつ病が表面にでた時期は残業が100時間を軽くオーバーしていました。その当時は電車に乗ることができず、出社拒否という形になりましたが、自分でうつと認めるのがいやで、病院にも行っていませんでした。弊社の社長の好意で病院に連れて行かれ、うつと認めてからはかなり楽になりました。現在は復職していますが、5年以上仕事をしていなかったこともあり、まだ就業時間を全うできていませんが、社内の支援もあり仕事を続けています。(39歳、プログラマ、女性)
  • 発症から10年超、勤務を続けながら、闘病してきました。発症当時は、200時間/月を越える時間外勤務していましたが、会社の経営状態が悪化したため、残業0時間の指示が出ました。しかし、2000年対応でカットオーバーの期限が迫っていたため、仕事量急減などの対応をとれるはずがなく、上司たちにも説明しました。それに対し、上司たちはシステムは動かなくてもよいから残業せずに期限通りにカットオーバーだけはさせろという無責任な指示を出しました。そんな無責任なことを担当者ができるはずもなく、業務を継続しました。無念な感情をすべて飲み込んで…。これが発症の最大の原因だと思っています。現在は、最近の業務負荷の増大で症状が悪化し、主治医に休業を勧められる状態になったので、残業数時間程度に仕事量を減らして何とかしのいでいます。(45歳、システム企画・計画・推進・管理、女性)