日経NETWORKでは、ユーザー取材をよく行う。ネットワークの管理・運用・構築にかかわっている方々にネットワークの構築やトラブルに遭遇したときの体験談を伺っている。日経NETWORKの「ネット構築の現場から」「トラブルからの脱出」という二つの定期コラムで毎号紹介するためだ。

 このユーザー取材で、筆者はよく驚かされる。

 地方都市で主に中堅・中小企業の顧客を持つシステムインテグレーターから、こんな話を聞いた。「ネットワークの構築を依頼された会社に行ってみると、Windows Serverを使って社内文書を共有していた。社員がほんの数人の会社であり、サーバーのユーザー認証やアクセスログ管理は不要なため設定していなかった。なのに、どうしてWindowsサーバーを導入したのかと担当者に聞いてみたところ、以前に相談したインテグレーターが『この方法しかない』ようなことを言ったので導入したらしい」。

 取材したインテグレーターは「1、2万円で販売しているネットワーク対応のハードディスクで十分だったはず。それなのに、この会社はファイル共有の対価に何十万円も支払っていた。いいようにやられた例だ」と付け加えた。

 上記の話は「高すぎる買い物をしてしまった例」だが、逆のケースもある。

 1000以上のクライアントがつながる社内ネットワークの担当者に、トラブル体験の話を伺ったときのことだ。「ユーザーから、メールを送信できない、受信できないといった声が上がるようになった。原因を調べると、自ドメインに届くスパムメールが増え、あて先不明を知らせる返信メールがキューにたまり過ぎてメールサーバーが正しく動かなくなっていた」というトラブルだった。特定ドメインに大量のメールを送りつけ、あて先不明が返ってこないアドレスを“生きている”アドレスとして収集する「ハーベスティング」攻撃だと思われる。

 担当者に聞くと「インテグレーターに相談すると、スパムメール・フィルターの導入を薦められた。しかし、何十万円もすると聞いて止めた」とのこと。1000クライアントもあるネットワークでは、適価な解決策の一つだと思うが、この担当者は断ってしまったという。

 では、どうしているのだろうと思って聞いてみたら、その答えに驚愕した。「週に1度、手が空いてる社員がメールサーバーをリセットするように指示した。1週間くらいなら、放置してもメールの送受信に少し時間がかかるだけ。送受信ができなくなるというレベルではない。特定の担当者を決めていないので、ときどきリセットを忘れることがある。そういうときは、私がリセットしている」と笑いながら説明してくれた。

 ここでは極端な例を二つ挙げたが、このように“身の丈”に合っていないと思われるネットワークの管理・運用・構築の事例は珍しくないようだ。しかし、いざ自分たちのネットワークが“身の丈”かそうでないかを判断するとき、何を基準にすればよいのだろうか。

 そこで、日経NETWORKではシステム担当者を対象としたアンケート調査『ネットワークの実態調査 2010』を開始した。企業の業種やクライアント数によって、DHCPやDNSの運用方法、WANサービス、セキュリティ対策、保守契約などがどのように違うのか、その実態を調べている。

 ITpro読者の皆さんにもアンケートへの協力をお願いしたい。このアンケートの結果は、後日、ITproや日経NETWORKで公開する予定である。

 なお、今回はアンケートの謝礼として、話題の「アップル iPad」や日経NETWORKのムック縮刷版「絶対わかる!超入門シリーズ まるごとDVD」を用意した。まるごとDVDは、日経NETWORKが2002年~2010年3月に発行した技術解説ムック「絶対わかる!超入門」シリーズ25冊分を1枚のDVD-ROMに収めたものだ。ふるってご応募いただきたい。