4月7日木曜日、慶應義塾大学の新川崎タウンキャンパスに理工学部の小池康博教授を訪ねた。筆者はうかつにも存じ上げなかったのだが、小池教授はプラスチック光ファイバ(POF)の世界的権威で、まだ54歳という若さながら毎年ノーベル賞の候補に名が挙がる人なのだそうだ。現在ネットワークの設計・構築をさせていただいているお客様の紹介でPOFが企業ネットワークでどの程度使えるものなのか、教えを乞うために伺った。

 詳しい内容は別の機会に紹介するつもりだ。ここに書きたいのは小池教授に感じたさわやかさだ。さわやかとは、「受注だ、売り上げだ、利益だ」と頭の中につねに数字がある人間と違い、物欲や金銭欲がまったく感じられない、という意味だ。自分の開発する技術を広め世界に貢献する、という使命感だけで仕事をされているのだろう。話を聴いていて気持ちがよかった。

 さて、今回は小池教授とは正反対な「絶対に受注してやる!」という貪欲さ丸出しの話を書こう。

提案コンペもプロジェクトだ

 先月のこのコラムの書き出しはこうだった。

 3月1日月曜日、「今週は大事なイベントが多い。すべてうまく乗り切れるかな」と思いつつ出勤した。火曜日には大手町でアナリスト向けにネットワークのトレンドについて90分の講演、水曜日には大型案件での役員プレゼン、金曜日には販売代理店向けのセミナーで70分の講演が予定されていた。

 実はアナリスト向けの講演とか、販売代理店向けセミナーのことは全然心配していなかった。コンペの勝敗がかかっている役員プレゼンがこの週の主題だった。

 5社が参加したこのネットワーク更改提案コンペは、きれいな勝利を収めることが出来た。「きれい」とは営業面も、提案内容も、思い描いたとおりに出来たということだ。筆者は相変わらず、営業も提案も、設計・構築のプロマネもやる、というスタイルを貫いている。営業をやる組織はあるのだが、そこから案件が落ちてくるのを口を開けて待っているのは性に合わない。どんどん、自分で案件を開拓している。案件が出来たら営業に声をかけて連携する。もちろん、営業から声がかかって一緒に開拓することもある。

 この案件もRFP(Request For Proposal:提案要請書)をもらうまでの営業は筆者が行った。提案コンペはRFPを受領する前から始まっている。ただ、そこまでさかのぼると話が長くなるので、今回はRFP以降について書こうと思う。提案コンペは短期決戦の立派なプロジェクトだ。先月は浅田真央プロジェクトのことを書いた。オリンピックで金メダルを取るプロジェクトほど華やかではないが、億円単位の金額規模は金メダル獲得プロジェクトを軽く上回る(余計なことだが、確信を持って“上回る”と書いたのは村主章枝選手が競技生活を続けるために年間2000万円を負担してくれるスポンサーを探している、というニュースを読んだからだ)。

 提案プロジェクトはプロジェクト・マネージャー(この場合は筆者)がRFPをじっくり短時間で読むことから始まる。きめ細かく読まねばならないのだが、時間をかける余裕はない。だから、矛盾しているようだが「じっくり短時間で」となる。RFPで最初に見ておくのは提案期日だ。この案件の提案書は百数十ページになったが、期日までの日数によって必要なメンバー数が変わるからだ。