前回は、資金決済法の前払式支払手段に関する規定によって電子マネーに関する規制がどのように変化するのかという点について言及しました。今回は、従来銀行の排他的固有業務とされてきた資金移動(為替取引)の規制緩和によって、IT事業がどのような影響を受けるのかという点について言及してみようと思います。

1 銀行以外にも解禁される資金移動(為替取引)サービス

 資金決済法では、「小額の取引として政令で定めるものに限る。」という限定はあるものの、銀行以外の事業主にも資金移動(為替取引)サービスが解禁されることになりました。

第2条2項
この法律において「資金移動業」とは、銀行等以外の者が為替取引(小額の取引として政令で定めるものに限る。)を業として営むことをいう。
第37条
内閣総理大臣の登録を受けた者は、銀行法第四条一項及び第四十七条第一項の規定にかかわらず、資金移動業を営むことができる。

 ここでいう小額とは100万円(資金決済法施行令第2条)であり、上限が設けられてはいます。しかし、従来、銀行法で銀行のみが可能とされていた資金移動(為替取引)サービスが、上限があるとはいえ、提供可能となったことによりIT企業のビジネスチャンスも広がったのではないかと思います。銀行法と資金決済法を比較してみると、概ね、以下の表のようにまとめることができるのではないかと思います。

表 銀行法と資金決済法の比較
 銀行法資金決済法
主体銀行のみが実施可能銀行以外でも登録を受けることにより実施可能(但し、100万円以下の小額取引に限る)
預金預金の受入れ、預金を原資とする資金の貸付が可能預金の受入れ、預金を原資とする資金の貸付が不可能
兼業規制原則兼業禁止原則兼業規制は及ばない
財産的な基盤最低資本金20億円業務の確実な遂行に必要な財産的な基盤が必要。為替取引に関し、利用者に対して負う債務の全額および還付費用の保全が必要
株主規制等
業務の代理、委託に関する規制銀行代理業に関する規制有業務の委託自体は規制されていないが、委託先に対する指導その他の措置が必要