このところ、「韓国に学ぼう」という趣旨の記事や主張を目にすることが多い。日本メーカーがリーマンショック以来の不況にあえぎ2番底の恐怖におびえる中で、韓国メーカー各社の業績が好調で、さまざまな分野でシェアを伸ばしているからだろう。

 例えば『日経ビジネス』は、2010年1月25日号の特集「韓国4強 躍進の秘密」で、かつては「後追い」と揶揄された韓国のSamsung Electronics社、LG Electronics社、現代自動車、POSCO社の4社がこの不況下でも競争力を高めている点を分析し、「危機脱出のヒントは隣国にある」と書いている(p.22)。

 また、東京大学ものづくり経営研究センターが主催する「ものづくり寄席」でも、1月25日に「韓国に学ぶ」というタイトルの講演が行われた。講師の吉川良三・同センター特任研究員(2004年まで10年間Samsung Electronics社常務を歴任)は、「韓国メーカーは価格、デザイン、サービスなど消費者からよく見える『表の競争力』に強い。日本メーカーもこれからは『裏の競争力』(注:生産性の高さなどの顧客からは見えない競争力のこと)だけでなく『表の競争力』も強化すべきだ」と強調していた。

 ただ、これらを読んだり、聴かせていただいて思ったのは、これらは教訓としてはかなり前からすでに指摘されていた、ということである。不況期にあえて投資する「逆張り」の経営判断、強力なリーダーシップによる危機意識の徹底、各国市場に深く入り込んで消費者ニーズを汲み取るマーケティング力、コストパフォーマンスが適正な製品を出す商品力、トップダウンで強力に推し進める徹底したコストダウン戦略などなど…、これまでさんざん言われてきたことだ。

 確かに、これまでのパターンがこの不況期にも繰り返されているという面はある。例えば、Samsung Electronics社が不況真っ只中の2009年3月に製品化したLEDバックライトを搭載した液晶テレビ「LED TV」は、日本が技術的には先行して製品化していたにもかかわらず同社がマーケティング力と「逆張りの積極投資」で市場を開拓し、高いシェアを獲得した。

 これらの課題が依然として未解決で取り組むべきことだということを踏まえても、一方で思うのは、日本メーカーがなかなかこれらの課題を克服できない、何か別の要因を考える必要があるのかもしれない、ということである。分かっていても、行動に移すことが難しい何か---。