「資金決済に関する法律」(以下「資金決済法」といいます)が成立し、平成22年4月から施行されました。

 資金決済法では、「前払式支払手段」(第2章)、「資金移動」(第3章)、「資金清算」(第4章)の3つの章に、主要な規定が設けられています。このうち、「前払式支払手段」と「資金移動」は、情報通信技術等の進展への対応という視点から規定されたものであり、「資金清算」は、銀行間の資金決済の強化という視点から規定されたものです。

 情報通信技術等の進展への対応という視点から設けられた、「前払式支払手段」(第2章)、「資金移動」(第3章)は、IT事業に対する影響が大きいものです。

 そこで、今回は、資金決済法の「前払式支払手段」「資金移動」とIT事業との関係を検討していきたいと思います。

 なお、資金決済法の概要については、金融庁が、以下のURLで、資金決済法の概要を図示した資料を発表していますので、参考にしていただきたいと思います(こちら)。

1.前払式支払手段としての規制を受ける電子マネーサービス

 では、具体的には、どのような事業が影響を受けるのでしょうか。真っ先に思いつくのは、電子マネーを利用したサービスです。「電子マネー」という言葉は、法律上、明確な定義があるわけではなく、約款等で定義し、使用されているように思います。現実には、「金額に応ずる対価を得て電磁的に記録された金額情報」をICカード等に記録しているICカード型(例えばSuica、PASMO等)と、サーバにおいて管理しているサーバ管理型(オンラインゲーム等のゲーム機では、この方法が採用されているようです。)という2つの類型の電子マネーが広く認知されています。

 下記の要件を具備する場合には、電子マネーを利用する決済は、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当します。おそらく、多くの電子マネーがこれに該当するのではないかと思います。

要件
  1. 金額等の財産的価値が記載・記録されていること
  2. 金額・数量に応ずる対価を得て、発行される証票等又は番号、記号、その他のものであること
  3. 代価の弁済等に使用されること

 従来は、「前払式証票の規制等に関する法律」(以下「プリカ法」という)等による規制が存在していましたが、この法律の規制の対象となるのは、ICカード型の場合のみであり、サーバ管理型の電子マネーは規制の対象外でした。

 そこで、資金決済法では、サーバ管理型の電子マネーにも、ICカード型と同様の規制を及ぼすことを目的とした条文も盛り込まれています。

 サーバ管理型の電子マネーを取り扱う企業は、資金決済法により、今までは気にする必要がなかった対応を迫られることになる可能性が高いので、十分な注意が必要です。具体的な留意点については、次回以降に言及します。