「日本のメーカーとして唯一、グローバルのサーバー市場で5強に入っている。いずれトップ3に入りたい」。富士通でプロダクト事業を統括する佐相秀幸執行役員(4月1日付で執行役員副社長)が3月31日のIAサーバー新製品発表会で、サーバー事業拡大を宣言した。富士通は米IBM、米Hewlett-Packardに次ぐポジションを獲得するために、どんな秘策を持っているのだろうか。

 米調査会社の資料などから推測すると、富士通のサーバーの世界シェア(2009年の出荷金額)は5%弱、3位の米デルは12%強とみられる。富士通がデルを追い抜いてトップ3に入るには、現在のサーバー事業の売上高2000億円強を2倍以上の5000億円規模にする必要がある。失礼ながら、佐相氏はそれがどれほど大変なことかを分かっているのだろうか。

富士通が話す「二つの強さ」は本当の強さか

 2010年4月1日付で社長に就いた山本正己氏と同じように、長年、携帯電話やパソコンを担当してきた佐相氏は、2010年2月にサーバー事業などを統括するシステムプロダクトBG(ビジネスグループ)長になったばかりだが、富士通の強さを発揮すれば可能と見ている。その一つは、サーバーの自社開発へのこだわりで蓄積した高信頼性や高速化、仮想化の技術力である。もう一つは、メインフレームからオフコン、UNIXサーバー、IAサーバー、さらにはデータセンターや科学技術計算など特化分野向けサーバーと、幅広く品ぞろえをしたことだという。

 しかし、この二つは果たして強力な武器になり得るのか。自社開発の技術を幅広く手掛けることは、少ない投資金額を分散させてしまい、世界に通用する強力な商品開発を難しくする。これは富士通が現在直面している厳しい現実ではないのか。

 国内向け中心のメインフレームGSシリーズは顧客資産を継承するために、「歯をくいしばってもやる」(佐相氏)とするが、その需要は減る一方である。かつてのような高収益は確保できなくなりつつある。オフコンもUNIXサーバーも大きく伸ばせそうにない。

 となると、期待できるのはIAサーバーになる。グローバル展開とクラウドコンピューティングへの対応という点で、IAサーバーの成長を見込めるだろう。競争は激しいが、ここを伸ばせなかったら、3強入りは夢のまた夢ということになる。そのIAサーバーの製品ラインは、日本製のPRIMEQUESTと独製のPRIMERGYの二つある。

やっと歩み始めた「IAサーバー国内20万台」への道

 高信頼性を売りにするPRIMEQUESTは、メインフレームやオフコンなどミッションクリティカルなシステムのリプレースを狙う。2005年4月の発売以来、1400台超の販売実績になるが、実は当初目標は1万台(3年間)であった。それでも、河部本章IAサーバ事業本部長は「確かに当初計画の数字には達していないが、成功した」と強気だ。「オープンへのマイグレーションの道を開いたことと、製販一体でユーザーが何を求めているかがはっきり分かってきた」からだという。