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東葛人的視点

アップルのプレゼンを中断させた“クール”な日本製品

木村 岳史=日経コンピュータ 2010/04/13 日経コンピュータ

 いま最も“クール”なIT企業といえば、米アップルであろうか。最近米国で発売したiPadは、日本でも注目の的。「なぜ、こういうデジタル機器を日本企業がつくれないのだろうか」と考えると気が重くなるが、ある昔話を思い出した。あまりのクールさゆえに、アップルのプレゼンを中断させてしまった日本製のデジタル機器があったことを。既存の市場をデジタルで塗り替え、日本企業が独占的地位を築くきっかけとなった、あの伝説の機器である。

 そのデジタル機器とは、カシオ計算機が1995年3月に発売したデジタルカメラ「QV-10」である。デジカメはそれ以前にも他社から製品化されたことがあったが、手頃な価格のうえ、液晶画面で撮ったその場で画像を確認できることなどが消費者に受け、大当たりした。この成功で突如として、デジカメ市場が誕生した。今日の日本製デジカメの隆盛は、このQV-10から始まったと言ってよい。

 当時このデジカメがどれほど衝撃的だったかを示すエピソードが冒頭の話だ。私の同僚が米国出張に出かけた際に、発売間もないQV-10を持っていったことで、その“事件”が起きた。ちょうど開催されていたコンピュータショーに立ち寄り、アップルのブースで新製品のプレゼン風景をQV-10で撮影したのだ。そうすると・・・。

 まず、その同僚の周りにいた観客が騒ぎ始めた。アップルの新製品の話を聞きに来たはずが、隣の日本人が持つデジタル機器の方が気になりだしたのだ。もちろん当時はまだ、QV-10の情報は米国に伝わっていなかった。やがて同僚に対して「これは何だ」「どうやって使うんだ」との質問攻めが始まった。遂に、アップルのプレゼンターも自社製品のプレゼンを中断し、質問の輪に加わった。彼は「イッツ クール!」を連発していたという。

 そのQV-10だが、今も私の手元に1台ある。改めて眺めてみたが、はっきり言ってオモチャである。当時も“本物”のカメラとしては使い物にならなかった。その同僚も、米国出張報告では別のフィルムカメラで撮影した写真を使っていた。だが、我々も米国人と同じく、QV-10をいじっては「凄い!」を連発したものだ。単なるもの珍しさだけでなく、「これで写真が変わる」と実感したからだ。

 まあ、時代を変えるプロダクトとは、いつもこんなものかもしれない。その製品が持つ“ベクトル”が人を惹きつける。当時はWebサイトの黎明期で、メディアとしての可能性がいろいろと議論されていた時期だ。「Webサイトで使う写真を手軽に撮影・入力できたら」という潜在ニーズを、このQV-10は捉えていた。

 さて、長々とデジカメ話を書いてしまったが、言いたかったことはただ一つ。日本企業にも画期的なデジタル機器を作る力があるということである。そう言えば、今では“ガラパゴス化”の象徴のように言われる携帯電話のiモードも、画期的なデジタル製品/サービスであり、一時は世界がそれを真似ようとした。ところが最近はめっきり、そうした日本発の画期的なデジタル製品が少なくなってしまった。

 それは何故かだが・・・うーん。デジカメの場合、日本にはニコンやキヤノンをはじめとする世界トップレベルのカメラ/写真産業がベースとしてあり、そこにカシオがデジタル製品でチャレンジした。それが既存産業の危機感を煽り、一気にカメラのデジタル化が進み、世界の追随を許さない一大デジタル産業を形成することになった。では、他のカテゴリーのデジタル機器の場合はどうか。分厚い既存の産業はあっても、チャレンジャーが見当たらない。やはり、そこが問題か。

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