「仮想化技術はコモディティ化した」。仮想化関連の製品を提供するあるベンダーの担当者から最近、こんな意見を聞いた。仮想化技術が当たり前になって、もっとユーザーに利用されるようになる、という意味での発言である。だが筆者は「コモディティ化」という言葉に、少々違和感を覚える。

 確かに、仮想化技術の利用は広がっている。昨年あたりからは、ERP(統合基幹業務システム)などの基幹系システムで仮想化技術を採用する事例が増えている。

 IDC Japanが2009年12月に発表した国内の仮想化サーバーの市場予測によると、サーバーの出荷台数全体に占める仮想化利用を前提としたサーバーの出荷台数比率は、2009年の12.3%から、2013年には23.2%に伸びるという。2008~2013年の仮想化サーバーの出荷台数の年間平均成長率は18.3%と、大きな成長を見込む。

 無償で使える製品が増えたことも、仮想化技術の利用拡大につながっている。ヴイエムウェアは「VMware ESXi」を2008年から無償提供しているし、シトリックス・システムズ・ジャパンも2009年3月から「Citrix XenServer」を無償化した。マイクロソフトの「Hyper-V」もWindows Server 2008で標準で利用できる。

構築・運用の難しさがコモディティ化を阻害

 IT分野でコモディティ化といえば、そのカテゴリーの技術が一般化して広く普及することであり、同時に、競合製品間で技術的な差異化要素がなくなって、価格競争になる状態を指す。WindowsやLinuxをインストールしたPCサーバー(特にエントリー機)は、コモディティ化した製品の典型だろう。

 無償で利用できる製品が増え、仮想化技術の利用は着々と広がっている。それでもまだ仮想化技術は、PCサーバーで起こったようなコモディティ化は進んでいないように思う。理由の一つは、仮想化環境の構築や運用管理が難しく、そのノウハウが不足していることだ。

 仮想環境では、必要な性能や信頼性を確保するためのシステム設計は簡単ではない。一つの物理サーバー上で複数の仮想サーバーを稼働させるためだ。また運用管理では、仮想、物理双方のリソースを管理しなければならないので管理対象が増え、管理の仕組みも複雑になる。

 ユーザーは、仮想化環境の特徴を理解してシステムの構築・運用を行う必要がある。そのノウハウやITエンジニアのスキルは、まだ十分に蓄積されているとは言いがたい。