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電子メールの限界

2010/03/19

 先日、Twitterで「サイボウズの社内では、E-mailをほとんど使いません」と発言したところ、大きな反響がありました。今回は、電子メールのメリット・デメリットについて、書いてみたいと思います。

 私は前職のときに、片手間ではありますが、メール・サーバーの管理業務をやっていました。Sun OS 4.1のワークステーションでSMTPサーバーやPOP3サーバーを動かし、依頼があればメールのアカウントを作ったり、削除したりしていました。

 手間のかかる業務だと思われるかも知れませんが、私にとってはとても幸せな仕事でした。なにしろ、私は元々、情報システム工学科の出身。むしろ、こちらが専門です。スーパー・ユーザーのアカウントをもらえる嬉しさは、一言で表現できるものではありません。日々、あちこちの部門から届く、メール・アカウントの申請に、嬉々として対応していました。

 事業部のメンバー全員が電子メールを使えるようになると、新たな要望が舞い込んできました。それは「通達を全員に送りたいんだけど、電子メールのあて先に全員入れるのはたいへん」というものです。私はまた喜んで、全員が入ったメーリングリストを作成しました。そして、メーリングリストは、「全員あて」に加えて「○○部」「部長以上」「課長以上」といった具合に、要望に応じてどんどん増えていきました。

 こうなると大変です。人事異動のたびに大幅な設定変更が必要です。私は設定ミスを連発してしまいました。そして、新しいメーリングリストの作成要望に応えきれなくなっていきました。

 そこで今度は、Newsサーバーを立ち上げ、「他のメンバーに公開してよい情報交換については、こちらでやり取りしましょう」と呼びかけてみました。しかし、定着することはありませんでした。メンバーに聞いてみますと、「公開しているところに書き込むのは勇気がいる」「電子メールと使い勝手がまったく違うので、使い方に慣れない」といった反応でした。ごもっともです。

ある日、ついにサーバーが落ちる

 そして、事業部でついに恐ろしい事件が勃発します。ある偉い人が、大きな添付資料をつけたメールを全員あてに送信してしまったのです。これがサーバーのディスク容量をあっという間に占領し、動かなくなりました。このサーバーは、そもそもCADの業務用でしたので、事業部全体に大きな迷惑をかけてしまいました。

 メールの削除作業後、私は怒ってメンバーに呼びかけました。「大きな添付書類を全員あてに送らないでください!」。ほとんどのメンバーがこのルールに従ってくれましたが、ある人が返した言葉を私は今でも覚えています。「それは、システムのほうが悪い」。

 それは事業部長の言葉でした。よく考えてみれば、事業部長の言うとおりです。サーバーが落ちたのは、利用者のせいではない。利用者は自由に使い、便利であればそれでよいのです。それに応えられなかったシステムが悪いのです。

 全員にファイルを送りたいとき、全員が読める掲示板システムがあって、そこに簡単にファイルをアップできて、「これを見ておいてね」と書けば全員に通知が伝わる、そんなシステムであれば、無駄にリソースを消費せずに済んだのです。

社内コミュニケーションには「掲示板」や「社内メール」を活用

 この辺りの経験が、今のサイボウズ製品に反映されています。実際、サイボウズ社内では、公開してよいやり取りは「掲示板」で、公開してはいけないやり取りは「社内メール」で行っています。ここでいう「社内メール」とは、通常の電子メールとは異なり、一部のメンバーだけで共有するクローズドな掲示板機能です。さらに、「掲示板」と「社内メール」は、ほぼ同じユーザー・インターフェースとしています。過去の苦い経験から、使い勝手の良いシステムでないと利用してもらえないということを痛感しているからです。

 電子メールは、ずいぶん古くからある仕組みですので、よい面もあれば、限界もあります。システム構築にかかわるものとしては、電子メールの限界を知っておくべきですし、それをカバーするようにシステムを改善していくべきだと思います。

 歴史的に見ても、コミュニケーションの手段は増え続けています。手紙に加え、電話が作られたように、FAXが作られたように。そして、インターネットの発達とともに、その手段は加速度的に増えてきています。使われなくなったツールは、形を変えたり、淘汰されたりしていきますが、新たなコミュニケーション手段の開発自体は、これからも永久に続いていくことでしょう。その当たり前のことから目をそむけず、よりよい手段を開発・選択していかなければならないと思います。

著者プロフィール

青野 慶久(あおの よしひさ)
 サイボウズ株式会社代表取締役社長。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後,松下電工株式会社入社,BA・セキュリティシステム事業部営業企画部に在籍。1997年サイボウズ株式会社を愛媛県松山市に設立,取締役副社長に就任。マーケティング担当としてWebグループウエア市場を切り開く。その後,「サイボウズ デヂエ」(旧DBメーカー),「サイボウズガルーン」など,新商品のプロダクトマネージャーとしてビジネスを立ち上げ,事業企画室担当,海外事業担当を務める。2005年4月に代表取締役社長に就任。

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