気がつくと我が家には4つのAtomがいた。初期のネットブックで多用された「Atom N270」、デュアルコアで4スレッドを同時に実行できる「Atom 330」、NVIDIAのグラフィックス統合チップセット付きのAtom 330、そしてついに登場したファンレスの「Atom D510」である。なぜ、彼らがウチに住み着いたのか。そのいきさつを語りたい。

ネットブック時代の到来を告げた「Atom N270」

 最初にやって来たのは、Atom N270。当時、爆発的な反響を呼んだネットブックに入っていた。ネットブックには「これで十分!」という潔さがあり、値段も安いことから気軽に手を出した。期待したのは、「iPod touch」のように音楽やビデオを気楽なスタイルで楽しめること。iPod touchは何度か店頭で触ってみてたが、筆者にとってはどうにも使いづらく中途半端。寝転がって楽しむには、ネットブックのほうが断然いいと思った。だが当時、「iPad」が登場していれば、そっちを選んだかもしれない。

 迷わず選んだネットブックはAcerの「Aspire one」。当時としては珍しくハードディスクを内蔵していた。「これだ!」と思い、実物も見ないで、量販店のネット通販で予約注文した。

 ところが、やっと届いた初期ロットは、内蔵冷却ファンがハエの羽音のようなノイズを始終発する代物。だんだんガマンできなくなってきて数カ月後に持ち込み修理に出した。「ファンがうるさいんです」と言っただけで、「はい、ではこれにご記入ください」と係員はテストもしないで、すぐに受け付けてくれた。何と説明すれば分かってもらえるかと心配していたので拍子抜けした。ネットで調べてみると、同じような目にあったユーザーが少なくなかったようだ。

 とはいうものの、Atom N270は趣味に実益に大活躍してくれた。とりわけ昨年のITpro Expo会場では、記事を書いたりするのに重宝した。ただし、ネットブックという呼称とは裏腹に、Webブラウザを使うときは不便だ。1024×600ドットの画面では、横は十分だが、縦がまったく足りない。上部3段をメニューやツールバー、タブなどが占有するので、実際に使える領域はもっと狭くなる。YouTubeで動画を見るときは、全画面モードにしないとビデオがはみ出してしまう。ネットブック全般に言えることだが、縦の解像度をもっと上げてほしい。

擬似クアッドコアの「Atom 330」に大きく期待

 次にやって来たのは、デュアルコアのAtom 330。老舗ショップ・ブランドのミニタワー機に入っている。ハイパースレッディング機構が働き、計4スレッドを同時に実行できる。幻想と分かっていても「低消費電力かつ高性能」という夢を抱いて購入した。

 だが、Atom 330自体の問題ではない2つの点で、期待は見事に裏切られた。

 1つはBTOで組み立てられたシステムのいい加減さであった。録画サーバーとして使うつもりだったのに、肝心のS3モードのスタンバイ機構が正常に働かない。それに、ハードディスクや冷却ファンが騒音を立てる。ショップとの間でマシンの行ったり来たりが1カ月近く続いた。徐々に改善は見られたが、あげくの果てに「これは仕様です」と逃げられてしまった。

 もう1つの問題は、チップセットに使われている小口径の冷却ファン。前述のネットブックの件でも触れたように、これがなんとも耳障りなノイズを常時発するのだ。CPUチップ自体はファンレスである。低速回転のものに取り替えると改善されるというブログを読んでトライしてみたが、今度はファンを固定する冷却フィンと共鳴を起こして、余計うるさくなった。

 このころから「低消費電力」で「高性能」かつ「静音」を両立したシステムへの渇望が日増しに募り始めた。