2010年初めにITproが発表した「ITpro読者が選んだ2010年のITキーワード」で注目度が高かったキーワードが「IPv6」である(関連記事)。IPv6の注目度が高いのは、IPv4アドレスの枯渇が現実のものになってきたからだ。

 事実、2010年に入ってすぐに割り振り可能なIPアドレスの在庫が10%を切った(関連記事)。今後、IPv4アドレス枯渇やIPv6に関する話題がさらに活発になっていくのは間違いない。IPv4アドレス枯渇とIPv6に関する最新動向を確認してみたい。

未割り振りアドレスは8%、実質は残りわずか6%

 まず、IPv4アドレスの割り振り状況を確認しよう。

 IPv4アドレスは、IANA(Internet Assigned Numbers Authority)と呼ばれるIPアドレス管理組織がブロック単位で割り振る。1ブロックは約1677万アドレスである。IPアドレス全体をこのブロックで考えると、全部で256ブロックになる。2010年3月2日現在、未割り振りのブロックは22個である。これは、全IPアドレスの8%だ。

 ただし、未割り振りブロックの最後の5個は世界5つのRIR(地域インターネットレジストリ)に割り振ることが決まっている。このIPアドレスはIPv6移行用と決まっており、IPv4アドレスを使った事業の拡大・継続といった用途としては使えない。そのため、実質の残りのブロックは17個。全IPアドレスのわずか6%だ。

 APNICのジェフ・ヒューストン氏による枯渇予測日(関連記事)は2011年9月である(2010年3月2日時点の予測)。IANAの在庫がなくなってもRIRにしばらく在庫があるため、この時期にすぐにIPアドレスが割り振れなくなるわけではない。ただ、2012年中にはRIRの在庫もなくなる見込みである。

 IPv4アドレスは確実に消費されており、枯渇へ近付いていることが分かる。

いつの間にかIPv6環境、ソフトバンクが2010年4月から

 つい最近、IPv6に関して大きな動きを見せたのがソフトバンクである。ソフトバンクBBとソフトバンク系のIX(インターネット相互接続点)事業者であるBBIXは、トンネリング技術を使うIPv6インターネット接続サービスを2010年4月に開始すると発表した(関連記事)。2010年4月以降、新規に配布する宅内ルーター(光BBユニット)にIPv6接続機能を搭載する。配布済みの宅内ルーターは、ファームウエアの更新で対応する予定である。

 このサービスの特徴は、追加料金やPCに専用ソフトを追加するといったことなく、現状のインターネット・ユーザーにIPv6接続環境を提供するところである。ユーザーは、「知らないうちにIPv6にも接続できるようになっていた」という状況になる。

 ユーザーからすれば、接続先がIPv4であろうがIPv6であろうが、意識せずにサイトに接続できるようになってほしいはず。こうした環境が、Yahoo!BBに契約する約400万人ものユーザーに無償で提供されるという点でインパクトがある。さらに2010年度後半には、ソフトバンクBB以外のプロバイダにもIPv6のローミングサービスを提供するとしている。

 国内のインターネット関連事業者のIPv6対応リミットは、2011年4月になりそうだ。これは、東西NTTのNGN(次世代ネットワーク)を使ったIPv6インターネット接続が可能になる時期である(関連記事)。この時期からNGN経由でIPv6インターネットを利用するユーザーが増えてくることが予想される。

 インターネット関連事業者は、IPv6ユーザーが増え始めるこの時期に自社だけIPv6でサービスが提供できないといった状況になることは避けたいはず。こうした事業者は、2011年4月に照準を合わせてIPv6サービスを発表してくるだろう。

気になるコンテンツ側の対応、YouTubeがIPv6対応に

 これまでIPv6対応が進まなかった原因の一つとして、IPv6で見たいコンテンツや使いたいサービスが少なかったことがある。こうした状況は、今もあまり変わらない。プロバイダやデータセンター事業者に比べて、コンテンツ事業者のIPv6対応は遅れ気味である。

 ただ全く進んでないわけではない。最近の大きなトピックとしては、2010年2月5日にYouTubeがIPv6対応を完了させた(YouTubeの公式ブログ)。ちなみに、Googleの検索サービス自体は既にIPv6に対応済みである。これまでのように実験や研究という目的ではなく、今後は、IPv6接続環境を持つユーザーの増加をにらんで、戦略的にIPv6対応を打ち出す大手サイト/サービスが増えてきてもおかしくない。

 今後さまざまなインターネット関連事業者が、具体的なIPv6サービスやIPv4枯渇関連サービスを打ち出してくるだろう。IPv4アドレス枯渇は、インターネット関連事業者だけでなく企業ユーザーやエンドユーザーにも影響が出る問題である。今ある自分のインターネット環境がどのように変わるのかをウオッチしておく必要がある。

 なお、IPv4アドレス枯渇/IPv6移行関連の情報は、特番サイト「IPアドレス枯渇カウントダウン」でも発信していく。