今、クラウド・コンピューティングに関する情報は山のようにある。だが、「ユーザー企業が本当に知りたい情報」がどれだけあるかといえば、残念ながら断片的にしか得られていないのが実情だ。そこで日経情報ストラテジーと独立系コンサルティング会社の東京コンサルティングは共同で「CIO公開質問状」という試みを実施した。日本の有力ユーザー企業18社のCIO(最高情報責任者)から「クラウド」に関する「よくある質問」を7つ募ったうえで、これをベンダー8社にぶつけるというものだ。本日までに第1弾を掲載した

 ユーザー企業を代表し、本音ベースの関心事を質問するのが企画の趣旨である。具体的には「手の届かないところに預けた情報・データに、万が一の事故が起きた場合はどうなるのか?」「情報・データを囲い込まれたくないが、クラウドの規格標準化・オープン化についてはどう考えるのか?」といった質問をぶつけ、生の回答を掲載している。

 8社は50音順で、NECNTTデータグーグルセールスフォース・ドットコム日本IBM日立製作所富士通マイクロソフトである(それぞれ、各社の回答にリンクしている)。分量が多いので、順次掲載する予定だ。

 筆者は、日経情報ストラテジーで企業の経営革新、特にメーカーや流通・サービス業などの企業が競争力を高めるためにどんな取り組みをしているかという領域を担当してきた。なので、クラウドの技術的側面よりは、ベンダー各社の「戦略」に関心がある。特にクラウドという新たな市場での競争にどんな戦略で臨むのか、国境が意味を成さないクラウドという世界で各社がどう戦うつもりなのか、こうしたことを知りたかった。

 これまで筆者が経験した戦略に関する取材では、ライバル企業について多くを語らない人が多かった。ところが今回は、回答者全員がグーグルの名を口にした。グーグルが一般消費者向けの検索・メールサービスなどで得た高い知名度を積極的に活用しようという企業もあれば、「グーグルとは違う」ことを強調する企業もあった。グーグルと同じ土俵に乗るまいとする企業もあれば、その逆の企業もあるように思えた。具体的な発言内容はここではあえて引用しないので、ぜひリンク先の記事を読んでいただきたい。

 裏を返せば、まだこの市場では唯一の勝者になっている企業はなく、デファクトスタンダードもないということだ。ユーザー企業のCIOにとって、情報システムを導入する時に様々な選択肢があって自由に選べるというのは、悪いことではないはずだ。