サーバーリソースをネットワーク経由で貸し出す「クラウド」を提供する動きが、日本でも活発になってきた。こうした国産クラウドに対して、取材先からこんな疑問の声を聞くことが多い。「仮想化技術を使った単なるホスティングサービスではないのか?」。

 現在提供されている国産クラウドは、筆者が把握しているだけで40近くある。そのほとんどは、市販品やOSS(オープンソース・ソフトウエア)として入手できる汎用的な仮想化ソフトを使って仮想サーバーを構築し、この仮想サーバーを月額課金で貸し出す形態である。仮想化技術を使っている点を除けば、提供形態はホスティングサービスそのものだ。

 だからといって、国産クラウドは既存のホスティングサービスと「同じ」なわけではない。サービス内容を細かく比べてみると、クラウドはホスティングにはない特徴を持っていることが分かる。

拡張性や導入できるOS/ミドルウエア、障害時の対応に差

 クラウドとホスティングサービスの違いは、サーバーリソースに拡張性があるかどうかにある。ホスティングはCPUのコア数や処理性能、メモリー容量といったサーバーリソースを固定して貸し出す。ユーザーが後から追加できるのは、ストレージ容量くらいである。これに対し国産クラウドであれば、CPU、メモリー、ストレージをいずれも後から追加したり、減らしたりすることが可能だ。

 導入できるOSやミドルウエアの種類にも違いがある。ホスティングでは、ベンダーがセットアップしたOSやWebサーバーソフト、データベースソフトしか利用できない。国産クラウドの場合、OSとしてWindowsやLinuxを選択できるサービスが多い。ミドルウエアについては、実装したOSに対応した任意のWebサーバーソフトやDBサーバーソフトを導入可能だ。

 実は、専用サーバーを利用するホスティングであればOSやミドルウエアを自由に選択できる。だが、障害時の対応で国産クラウドとの差が出てくる。

 ホスティングでは、サーバーが故障するとベンダー側の復旧作業が終わるのを待つしかない。国産クラウドの場合、障害が発生してもサービスの提供を継続できる。大半の国産クラウドでは、サーバーやストレージ、ネットワーク機器などを標準で冗長化してあるからだ。

 イメージで例えると、ホスティングは現実世界のテナントそのもの。広さが固定なので、社員が増えてオフィススペースが手狭になっても拡張することはできない。場所も固定しているため、火事や地震が起きても安全な場所にオフィスを動すことは不可能だ。

 対して国産クラウドは、広さを自在に変えられる。有事の際にもいち早く安全な場所にオフィススペースを移し、そこで事業を継続できる。