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オープンソース/Linux

記者の眼

日経Linux

今年は「家庭内クラウド」に挑戦します

2010/02/08
高槻 芳=日経Linux

 1年前から自宅でLinuxサーバーを立ち上げ、運用している。自宅で気軽に楽しめる趣味を増やそうと考えてのことだ。自分の手でサーバーを運用する苦労や喜びを味わうことは、取材にも多少は役立つのではないかとも思っている。Linuxサーバーを立ち上げた頃の取材対象は、システムの受託開発や運用を生業とするソリューション・プロバイダや、ユーザー企業のシステム部門だった。

 多くのITpro読者からは「いまさら」と思われるかもしれないが、サーバーを立ち上げる作業は、Linux初心者である記者にとって想像以上に楽しいものだった。数年前に購入し、今は使っていないパソコンにファイル・サーバーをインストールした。現在のLinuxはさまざまなアプリケーションがパッケージ形式で提供されているため、作業自体はかなりスムースに進められた。

 いざサーバーを立ち上げてみると、やりたいことが次々に出てきた。「どうせならWebサーバーやメディア・サーバーも立ち上げてみよう」「外出中でもサーバーを管理できるようにしよう」「安定稼働と省エネ性を考慮してハードウエア構成を見直すべきだ」といったことである。Linux専門誌やインターネットの情報をもとに一つひとつ実行した。こうなるとスキルは初心者レベルでも、心はいっぱしのシステム管理者である。

 さらなる野望も、むくむくとわいてきた。自分でバックアップ用のファイル・サーバーとして使うだけでもいいのだが、せっかくのサーバー群を自分だけで使うのはもったいない。もっとたくさんのパソコンからどんどん活用してもらい、利用者を喜ばせたい――と思ってきたのだ。

次の目標はシンクライアント・システムの手作り

 そんな“にわかシステム管理者”である記者にとって、天の配剤というべき仕事がやってきた。この1月に日経Linuxに異動になり、3月号で、Linuxディストリビューション「KNOPPIX」(クノーピクス)をテーマにした特集を担当することになったのである。

 KNOPPIXは、DVDやCDから起動できるライブ版Linuxの草分け的なディストリビューションで、日本でも根強い人気がある。記事で取り上げたのは、産業技術総合研究所(以下、産総研)が昨年12月にリリースした最新版「KNOPPIX 6.2 DVD日本語版(LCAT対応)」(以下、KNOPPIX日本語版)だ。記事の核になるテーマとしては当初から、新機能の「OS Circular」になると考えられた。産総研が日本語版に独自に実装したもので、Linuxの二大人気ディストリビューションである「Ubuntu」と「Fedora」は搭載していない。

 OS Circularは、少々乱暴な説明かもしれないが「自分だけのシンクライアント・システム」を構築できる機能である。ネットワーク経由でOSのディスク・イメージを取得し、KNOPPIX上の仮想マシンで起動する。OSのイメージは産総研が用意しているものが使える。自分で好みのOSのイメージを作成して、自宅サーバーから配布してもいい。

 記者は仕事柄、家族や親戚に「ちょっとパソコンに詳しい人間」と思われている。だから何かパソコンに問題があるといつも相談を受けるのだが、どの相談内容も一筋縄ではいかない。「昨日まで何も問題がなかったのに、今日は立ち上がらない」「新しいソフトを購入してインストールしたら、不安定になった」「何だか分からないけど、パソコンの動作が重い」といったことだ。

 実際にパソコンを操作できるならまだいいが、例えば遠くに住んでいる祖父のパソコンとなるとやっかいだ。遠距離電話でパソコンの動作状況や、どのようなアプリケーションをインストールしているかなどを聞き出すだけでも骨が折れるし、原因を探り出して問題を解決するのは至難のワザである。

 もし家族や親戚のパソコンを対象に、OS Circlarを使ったシステムを組んだら、どうなるだろうか。「最新のOSをインターネット経由で複数のパソコンに自動配布し、常にクリーンな状態で起動させる」「新しいソフトを導入して不具合が出たら、OSを前のバージョンに戻して安定稼働させる」など、あたかもシンクライアントのようなシステムを、自分の手で構築し、運用できるはずだ。「なぜかパソコンが動かない」という状況をいち早く解決できるので、みんなの喜ぶ顔が見られるはずである。こうしたことを、フリーのソフトで手軽に試せるのがLinuxの良いところだと思う。

さらに、家庭内クラウドの構築を体験してみたい

 “家庭内シンクライアント・システム”の構築プロジェクトをスタートさせるのはこれからだが、記者は次の野望も思い描いている。自分自身で「家庭内クラウド」を構築してみたいと思うようになったのだ。

 最近は、クラウドコンピューティングの概念を理解し、自分の体で覚えるための材料が簡単に手に入るようになった。例えば人気LinuxディストリビューションであるUbuntu 9.04と同9.10に、クラウドのインフラを構築するオープンソース・ソフトウエア(OSS)である「Eucalyptus」(ユーカリプタス)が収容されている。クラウド・サービスを支えるデータベース構築技術であるキー・バリュー型データストアについても、OSSを使い複数のマシンで分散処理させたりして、テスト的に使ってみることができる。

 もちろんこれらの環境の構築には、Linuxやクラウド関連の各種ソフトウエアの知識を学び、スキルを身に付ける必要がある。それらも含めてシステムを構築し運用することの苦労を味わい、課題を乗り越えたときの喜びを実体験しようと、記者は目論んでいる。

 その際には、会社のパソコンではなく自宅サーバーで試してみるつもりだ。記者の業務としてではなく、一人のシステム管理者(の卵)としてチャレンジするのである。日常業務ではなく、家族など周囲の人の役に立ち、喜んでもらえるようなITの仕組みを作ることができたら、ITに対する見方が大きく変わってくるはずだと、本気で考えている。

 もちろん、仕事にも良い影響がありそうだ。どのようなジャンルにせよIT分野の雑誌作りに携わる以上、クラウドの話題は避けて通れない。まずは自分の手を動かしてみることで、自分なりにクラウドの導入効果や課題を整理し、より正確に実態を伝えられるようにもなるはずだ。

 ということで、記者は今年、「家庭内クラウド」の構築に挑戦していく。そんなことを、Linuxの初心者である記者がどこまできるのか。何につまづき、どうやって解決するのか。今から楽しみになっている。いずれ日経Linuxなどで、その一端をお伝えできたらと思っている。

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