先日、IT企業の教育担当者を対象としたセミナーに、講師として参加してきました。筆者の講演テーマは「新入社員を早く即戦力化するには」。このテーマに教育担当者が興味を持ってくれるのは、あれこれ工夫して教育を実施しているのに、新入社員が一向に戦力に育ってくれないからでしょう。いつの時代でも言われることですが「近頃の若者は、なっとらん!」のです。しかし、愚痴を言うだけでは、何も解決しません。近頃の若者の特徴に合った教育方法を考えましょう。

戦力と呼べるITエンジニアとは?

 はじめに「戦力と呼べるITエンジニアとは、どのような人なのか」ということに関して、筆者の考えを述べさせていただきます。それは、ズバリ「自ら進んで勉強して、技術を習得できる人」に尽きると思います。なぜなら、ITエンジニアの仕事は、知識を売ることだからです。上司に言われなくても、自ら進んで知識の仕入れができてこそ、一人前のITエンジニア、すなわち戦力と呼べるITエンジニアです。

 それでは、どうしたら自ら進んで勉強する気持ちになれるのでしょう。ITやコンピュータを好きになればいいのです。好きなことなら、自ら進んで勉強します。休み時間でも、休日でも、知識の仕入れをします。自腹を切って、書籍や雑誌を買います。それを通勤時間に、興味を持って読みます。1つのシステムの開発を手がけながら、同時に自分の勉強のため別の実験システムを作ります。仲間とも、技術をテーマに大いに議論します。これが、戦力と呼べるITエンジニアの姿です。

新入社員はなぜ勉強しないのか?

 現在、ベテランと呼ばれているITエンジニアの多くは、ITやコンピュータが大好きです。大好きだから、IT業界に就職したのです。ところが、最近の新入社員の中には、それほど好きじゃないのにIT業界に就職した人が多くいます。身近なところでは、ここ2、3年の間に筆者の親戚で3人の就職や内定が決まりましたが、何とビックリ全員がIT業界です。3人の経歴をご覧ください。

●親戚A(情報工学科大学院卒)
・ 大学を選ぶ時に、ITを将来の仕事にすると決める
・ 学生時代に応用情報技術者試験に合格する
・ インターンシップで研修に行った大手IT企業の内定を得る

●親戚B(応用化学科大学院卒)
・ 父親の影響で、応用科学科を選ぶ
・ 「給料が一番よかったから」という理由で、大手IT企業に入社する
・ 新人研修で苦労したが、基本情報技術者試験にギリギリで合格する

●親戚C(園芸学部大学院卒)
・ 「親に学費で負担をかけたくない」という理由で、国立大学を選ぶ
・ 大学卒業時に就職先が見つからず、大学院に進む
・ 大学院卒業時にもなかなか就職先が見つからなかったが、どうにかIT企業の内定を得る(ITに興味があったわけではない)

 3人とも大学院卒です。その点では、優秀だと言えるでしょう。ただし、ITやコンピュータが好きでIT業界を選んだのは、3人中たった1人だけです。後の2人は、勉強は嫌いじゃないと思いますが、好きでもないことは自ら進んで勉強しないでしょう。このような人たちが、IT企業の新入社員なのです。