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「脳内案件」で鍛える提案力

2010/02/02
佐竹 三江=ITpro

 顧客に提案したソリューションのアイデアは、そもそもどこから生まれたか。システム導入事例などの取材で、ベンダーやITサービス会社など提供側の立場の人に会うと、つい根掘り葉掘り聞いてしまう。

 過去に同じような案件を経験していればまだしも、経験したことのないパターンの案件もある。顧客のビジネスに精通しているのが理想だが、現実にはそうでないことも多い。限られた時間のなかで、軸となるアイデアをどのように考え出し、検証し、提案を組み立てるのだろう。

 毎回そこを突き詰めて聞いていくと、大抵の提案は、元をたどれば個人の思いつきに端を発していることがわかる。ソリューションの軸になるアイデアをいろいろと提案する人の多くは、普段から自分の頭のなかで、アイデアをあれこれと思いついては検討しているようだ。

 だったら、普段からアイデアを多くひねり出せるように鍛錬すれば、提案力は高まるのではないか。そんなことを考えていたら、格好の取材先と雑談する機会を得た。彼は、かれこれ30年近くITにかかわる仕事をしている。とにかくアイデアの宝庫のような人である。

 大手上場企業で情報システム部門やIT事業部門を経験した後、ソフト開発会社など数社を経て、現在はITベンチャーに籍を置く。システム導入のコンサル営業兼プロジェクト・マネジャーのような仕事をしている。

 使えそうなリソースは社内外を問わず何でも使って、ターゲット顧客の課題を解決する方法を考える。その方法を提案し、勤務先に売り上げと利益をもたらす。これが彼の仕事である。ただし小規模なITベンチャーなので、使える人的資源やシステムインフラなどはわずかなものであり、自前でできることはほとんどない。

 筆者の印象では、これまでになく彼の知識やアンテナ、人脈、アイデアを生かした仕事をしているように感じる。そんな彼に質問をぶつけてみた。「ソリューション提案のアイデアはいつ、どんなふうに出てくるんですか?」。

多数の脳内案件を走らせる

 彼はよく頭の中に、仮想の顧客像を描いて提案を組み立てる作業をするという。移動中などの空いた時間に「もしもこんな客がいたら、どんな提案が考えられるか」と検討するのだ。どのようなパートナー企業が必要か。ワークフローはどうしたらよいか。流用できそうなソフト資産やノウハウはないか。ネックはどこか---。頭のなかで、こういった検討を進める。

 まずは制約条件を取り払った状態で「何がしたいか」だけを考えてみる。その次に現実の制約条件を当てはめて、実現可能性を検討する。それでも可能性がありそうなら、今度はSEを抱える部門の長やパートナー企業などに「もしも、こういう案件があったら、できそうか?」と仮の打診をして、「今は比較的余裕があるから、できる」とか「当面は無理」といった答えを参考情報として得ておくのだという。

 こうして、彼の頭の中にはいつも多数の仮想案件が走っている。こうしておくと、仮想案件と似た、あるいは共通部分をもつ案件が実際に発生した時に、ゼロから始めるよりもはるかにスタートダッシュが速いのだという。

 案件のイメージを作る材料は、新聞やWebサイトのニュース情報、人と会って仕入れた話などである。だから日々のニュース・チェック、そして情報交換は怠らない。

「妄想しているときが一番楽しい」

 もう一人、デキるソリューション営業として以前別の企画で紹介した取材先も、同じようなことを言っていた。「提案を組み立てる初期の段階で、あれこれとアイデアをひねり出して妄想しているときが一番楽しい」という。彼も、現実の案件とは別に仮想案件を設定し、パートナーやSE部門に実現可能かどうかを打診するなどして、将来の提案に備えていた。

 印象に残ったのは、二人とも提案をあれこれ考えるのを楽しんでいる様子だったことだ。頭の中で仮想案件を自由に設定し、提案を組み立ててみる。有望と感じたら、実現可能性を確認してみる。それが提案のネタとして、いつか役立つ。

 何かと守りに入りがちな状況ではあるが、「脳内案件」や「妄想」を大事にして仕事をすることも大切ではないか。自戒も込めつつ、そう考えた。

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