「事故」を岩波国語辞典で引くと、「ふだんとは違った、悪い出来事」とある。したがって「情報事故」と言ったら、情報にかかわる「ふだんとは違った、悪い出来事」になる。

 ITpro読者の皆様は「情報事故」という言葉から、どのような出来事を思い浮かべるだろうか。漢字四文字の連想からか、「情報漏洩」を筆者はまず想起した。この際なので、漢字四文字で情報事故の例をいくつか挙げてみたい。

緊急停止
 システムダウンである。新聞やテレビで大きく報じられるが、冷静に見ると、しかるべき時間内にシステムを復旧できており、ほとんど実害が無かった事例も多い。

開発遅延
 プロジェクトの失敗である。期限までにシステムの開発が終わらず、利用開始の時期をずらしたりする。半年、利用開始を遅らせた場合、経営に与える損害はシステムダウンよりはるかに大きいと思われるが、あまり話題にはならない。

費用超過
 開発が遅れると計画より、構築費用がかさんでしまう。予定の時期までに開発を終えられたものの、開発量が増えてしまい費用は超過した、ということもある。

計数過誤
 システムは期限までに出来上がり、利用開始後も止まることなく動いているが、計算を間違えたり、データを壊してしまったら、これまた経営にかなりの損害を与えてしまう。社会保険庁の年金管理システムの問題は、経営問題どころか国家問題になった。

伝達遅延
 情報システムに問題が無かったとしても、経営者や責任者にきちんと情報が伝えられなかった場合、重大な事故につながりかねない。例えば、製品品質の問題や顧客クレームなどである。ネットワークが停止し、しかるべき拠点にデータを送れなかった、という場合は上記の「緊急停止」に入る。

使用不可
 せっかく用意した情報システムを使えなかった、あるいは使わなかった場合は、「ふだんとは違った、悪い出来事」とみなせるから、事故の一つであろう。データ入力が面倒だと言って現場の営業担当者が営業支援システムを使わなかったり、詳細なデータ分析が可能なシステムを担当者が使わず、手元にあるExcelを利用していたり、といった事例を指す。

 思いつつくまま列挙した、以上の情報事故については当然、様々な対策が講じられている。今度は、対策を片仮名と英語で並べてみたい。

情報漏洩対策
 セキュリティポリシーの起草、アクセスコントロール、ノートPCおよびUSBメモリーの持ち出し/持ち込み禁止、バイオメトリクスの適用。

緊急停止対策
 ITサービスマネジメント(運用改善)、バックアップシステム、BCP(事業継続計画)。

開発遅延対策
 プロジェクトマネジメント、特にタイムマネジメントとスコープマネジメント。

費用超過対策
 プロジェクトマネジメント、特にコストマネジメントとスコープマネジメント。

計数過誤対策
 データクレンジング、マスターデータマネジメント、システム監査、内部統制および関連監査。

使用不可対策
 情報およびITリテラシーの向上、オペレーショントレーニングの徹底、ユーザーインタフェースの改善、システム使用インセンティブの付与。