「Androidが登場したとき,感じたことが三つある」。2010年1月21日夜にソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズが主催した,新端末「Xperia」のタッチ&トライ・イベントで,筆者はブロガーとアプリケーション開発者の皆さんの前で,こう話した。

 筆者は,ITproが主催しているAndroid向けアプリケーションの開発コンテスト「Android Application Award(A3,エーキューブ)2010 Spring」の“原点”を,2007年11月のAndroid登場時に感じた三つのポイントに絞って説明した。

  1. 日本のモバイル関係者の多くに,世界への扉が開かれた
  2. モバイル向けアプリケーションの開発が,はるかに自由になる
  3. 数年後には,携帯端末のOSの多くをAndroidが占めるだろうと確信した

 Androidは,米グーグルが中心になって開発した携帯端末向けのソフトウエア基盤である。誰もが無償で使えることから,世界中の多くのメーカーがAndroidベースの携帯端末の開発に取り組んでいる。

 日本ではNTTドコモのiモードが始まった1999年以降,モバイル向けのコンテンツ・ビジネスが急拡大したが,残念ながらその活躍の場は国内に限られていた。Androidは世界中に流通するので,モバイル向けコンテンツの開発者は世界の市場に容易に出ていけるようになる。これが第1のポイントである。

 第2のポイントは,これまでの携帯電話の開発につきまとっていた様々な制約から解き放たれることだ。アプリケーション間の連携やアドレス帳へのアクセスをはじめ,既存の携帯電話端末にあった制約がAndroidにはない。

 iモードの登場以来,各種モバイル端末向けにアプリを開発しているGClueの佐々木陽社長は,「モバイル・アプリの開発者は,(自由に開発できる場がごく限られた)砂場の世界から,大平原に解き放たれた」と表現した。2008年9月に開催したセミナー「オープンモバイル・コネクションズ2008」での発言である。

 第3の「数年先後には多くを占める」というポイントは,Androidを支持する顔ぶれを見て感じた。Androidの推進グループには,グーグル以外に,NTTドコモやKDDI,米クアルコムなどモバイル業界の主要企業が名を連ねている。しかも,筆者が信頼するモバイル業界の多くの人たちが,この取り組みに賛同していた。

 Androidの応用先は,いわゆる携帯電話やスマートフォンにとどまらない。先ごろ開催されたコンシューマ向け機器とサービスの展示会「2010 International CES」では,米ヒューレット・パッカード(HP)がAndroidを採用したネットブックを披露した。国内でも,NECビッグローブが専用の情報端末を,NTT東日本が通信機能付きフォトフレームを発表している。

 日本Androidの会(当時は,Android勉強会)はAndroidが登場した直後から,携帯電話以外の機器への応用を議論していた。近く,カーナビやデジタル・カメラなど,表示装置と通信機能を備える端末の多くがAndroidを搭載するようになるだろう。