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IT現場の災害対策は「人」が主役に災害はいつ何が起きるか分からない。大規模地震/風水害といった自然災害に加えて、最近では強毒性の新型インフルエンザにおけるパンデミック(世界的大流行)への対処も大きな課題になっている。厚生労働省の「新型インフルエンザ対策ガイドライン」(2009年2月)は、米国などの数字を参照して、パンデミック発生時は日本でも最大欠勤率が40〜50%に達するとしている。IT現場には、こうした多様な災害リスクについての対策が求められる。 自然災害に被災したときは、被災によって停止したシステムを迅速に復旧しなければならない。大地震でデータセンターが機能しなくなるような状況においても事業を継続するには、バックアップ用のシステムを遠隔地のデータセンターに用意して、それに切り替える仕組みが必要になる。被災してから復旧に日数をかけられるシステムの場合は、データやプログラムをバックアップして遠隔地に保管しておき、災害時はそれを利用してシステムを復旧する。
災害対策で人が果たす役割は大きいしかし、こうした災害対策において、人が果たす役割は想像以上に大きい。かなり重要なシステムでも、バックアップセンターの予備系システムを起動して、切り替える作業は多くの場合、現場のITエンジニアが手動で行っている。例えば神戸製鋼所は、重要な業務で使うシステムについて、神戸市のコンピュータセンターと兵庫県加古川市のセンターで、データとプログラムをほぼリアルタイムで相互にバックアップする仕組みを作っているが、予備系システムに切り替えるかどうかの判断は人間が行い、切り替え作業も人がコマンドを実行して行う。こうした判断・行動を、いつ襲うか分からない災害の際、確実に実行できるようにしておく。災害対策システムを構築した企業が苦心しているのはまさにこの点である。 パンデミック対策においても、人の役割は大きい。パンデミックの場合、システムは人の欠勤によって影響を被る。システムが障害を起こしたとき、運用担当者が十分に出勤していなければ、適切に対処することは難しくなる。結果として、パンデミック発生時は障害への対処に時間を要したり、障害が発生してシステムが止まったままになったりすることが予想される。感染によって誰が休むかは分からないということも重要だ。エンジニアはいつもより少ない人数で、必ずしも詳しくないシステムの運用に従事する可能性がある。
人に着目した実践的な訓練で課題が洗い出される災害時に見舞われるこうした厳しい状況の下で、現場のITエンジニアがいつもと同じように判断・行動できるようにするにはどんなことが必要だろうか。多くの企業は実践的な訓練によって、その課題と対策を洗い出している。神戸製鋼所の場合はコベルコシステムとともに神戸のセンターと加古川市のセンターがそれぞれ被災したという想定で、訓練を行うという。 課題として出てくるのは、災害対策システムの操作手順や手順書、被災時の情報伝達方法といった基本的な部分である。神戸製鋼所とコベルコシステムの訓練では、あえて災害対策システムに詳しくない担当者や入社してすぐの社員に、手順書を見て操作をしてもらう。そうして洗い出した課題をもとに改善することで、誰もが被災時に確実に操作できる手順や手順書に近づけている。情報伝達方法では、携帯メールを基本に連絡網を整備しながら、メールが届かないことも想定して、代替手段を用意している。 パンデミック対策では、会議室で擬似的に被災状況を作り出して体験する訓練が盛んになっている。富士フイルムコンピューターシステムでは、強毒性の新型インフルエンザによるパンデミックが発生したというシナリオに沿って、マネージャ層を対象にした訓練を2009年3月に実施した。被災状況に対して、どういうアクションをとるべきかを参加者に考えてもらうことで課題を洗い出している。富士通では富士通総研が設計したパンデミック対策用の訓練を、事業部門ごとに行っている。この訓練では参加者は、実際の従業者名を書いたカードを使って、ランダムに欠勤者が増えたときの状況を会議室で擬似的に体験する。あくまでもシミュレーションなのだが、だんだん被害が拡大していくリアルな想定のもとで、事業を継続するために必要な対策を参加者が自ら考える仕掛けになっている。 神戸製鋼所や富士フイルムコンピューターシステム、富士通など、実践的な訓練を行う企業に共通しているのは、人を中心に対策が機能するように重点を移していることだ。多くの企業を取材すると、この傾向は訓練を行う企業に必ず見ることができた。日経SYSTEMSの2010年2月号特集1では、これを「人が主役で進める災害対策」と定義して、多くの企業の取り組みを掲載している。地震などの自然災害と、パンデミックの両方について扱っているので参考にしてほしい。 連載新着記事一覧へ >>
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