独立系中堅ソフト会社が岐路に立たされている。ユーザー企業がIT投資を抑えているため、売り上げは急落。筆者が取材した限りでは、平均的なソフト会社では2009年度は前年度比20%超の減収、2010年度もさらに10%程度の減収になるのではないかとみている。このままの状態が続けば、リストラを断行しても赤字に転落するなど、経営危機に陥るソフト開発会社が続出しそうだ。

 独立系ソフト会社の多くは、販売管理費の削減や赤字プロジェクトの撲滅に注力するが、製造業並みに厳格な原価管理や品質管理を実現しなければ効果は出ないだろう。打つ手が人員削減しかないとなれば、縮小均衡フェーズに入っていくことになる。

 そうなる前に、業務提携や資本提携の相手を探そうという動きが活発化している。例えば2009年末、独立系ソフト会社の代表格とも言えるソランがITホールディングス(ITHD)の傘下に、エヌジェーケーがNTTデータの傘下に入ることが発表された。住商情報システムはCSKへの資本参加の可能性を探っている。このほかにも、M&Aの話が複数水面下で進んでいるという。

 ソランの千年正樹社長は2009年11月、ITHDと資本・業務提携に踏み切った理由を「あと5年は生き残れるだろうが、(中国やインドなど)世界のソフト会社と戦うには(年商)600億円では小さすぎる」と説明した。同社は2009年度に20%ほどの減収を見込む。

 ソランを買収する側のITHDの岡本晋社長も、「ITサービス業界のリーディングカンパニーとして確固たる地位を確立するには、規模拡大による進化の追求が必要」と語った。生き残りには規模が重要との認識は共通しているわけだ。ちなみにITHDはソランを傘下に入れることで、売上高4000億円の達成にメドが立ち、NTTデータに次ぐ第2グループの地位を固めつつある。

中国のIT大手も食指を伸ばす

 ソランやNJKのような独立系ソフト会社の買収や資本提携を考えているのは、国内の大手ITサービス会社だけではない。中国などの海外ソフト会社も食指を伸ばしている。ある国内ソフト開発会社の役員は「複数の中国ソフト会社が日本市場への本格進出を計画している」と明かす。

 日本のソフト会社からのオフショア開発案件が激減した今、その落ち込み分を補うために、日本の顧客と直接つながりをもつ日本のソフト開発会社に狙いを定めているというのだ。現に中国最大手のITサービス会社神州数碼控股(デジタル・チャイナ) が、日本のソフト会社SJIを傘下に収めるのを契機に、NTTグループとの提携交渉を始めていることが報道されている。

 日本向けのシステム開発ビジネスを手がける中国企業のなかには、日本のIT業界の閉鎖性を問題視する声が少なからず出ているという。独立系中堅ソフト会社を買収しても、大手ITベンダーや一部の大手ソフト会社ばかりに集中する多重下請け構造のために、ユーザー企業から直接案件を受注できるわけではないからだ。

 多重下請け構造の頂点にいる大手ITベンダーや大手ソフト会社にとっては受けいれ難い話だろう。だがこうした声が、何らかの動きにつながれば、頼れる親会社がいない独立系ソフト会社にとっては、飛躍へのチャンスになるかも知れない。