今年の6~7月,いよいよサッカーのFIFAワールドカップが南アフリカで開催される。また世界中のサッカー・ファンが熱狂するのだろう。

 実は昨年,「日経コミュニケーション」で国際ネットワークの特集記事を掲載した。そのとき部署内で話していて出てきた疑問の一つが,「南アフリカから世界各国に映像データを送るのに,十分なネットワークがあるんだろうか」というものだった。

 通信事業者に尋ねてみると,アフリカは沿岸部をぐるりと覆うように海底ケーブルが敷設されていて,南アフリカも確かにつながっている。そこから各国へは,映像はマルチキャストされるから思ったほどのトラフィックにはならず,問題は起こらないだろうということだった。

世界的に加速するブロードバンド

 さて,こんなタイトルをつけておいて申し訳ないが,話の本題はW杯ではない。企業の方々が,こうした海外のネットワーク事情についてどのように情報を入手しているかである。海外に拠点を展開しようという企業にとっては,各国の通信事情や情報通信政策は気になるはずだ。

 海外の通信事情や情報通信政策は,インターネットなどで調べて分かるものも少なくはないが,それでも一般のユーザーにはそれほど伝わっていないだろう。例えば発足してちょうど1年が経った米国のオバマ政権。「政権発足前からうわさされていた情報通信政策って,その後どうなってるんだっけ?」と考えてみても,答えはすぐには見つからない。

 芋づる式に,他国の情報通信政策についても頭に浮かぶ。英国の「デジタル・ブリテン」,フランスの「フランス・ニュメリック2012」(ニュメリックはデジタルの意味)などだ。どれも,現時点で何かが出来上がっているというものではない。ただ,一時騒いだ割には,そのあとがシーンとしてしまったなという印象がある。

 日本企業が盛んに進出している中国や東南アジア諸国の事情はどうか。実は,こうした国々については,情報通信政策のほか,実際の通信インフラがどうなっているのか,欧米の事情以上に,分からないのが普通だろう。例えば携帯電話は一般的に使われているのか,おサイフケータイはあるのか,現地の人たちは,Android携帯や米アップルのiPhone,米アマゾン・ドットコムのKindleは使えるのか。もう少し企業寄りに考えれば,どのくらいの速度の回線があるのか,Bフレッツのような光ファイバ回線は整備されているのか,そもそも日本の通信事業者はリーチできているのか。

 もちろんアジアでも,ブロードバンド整備やモバイル化の動きは加速している。必ずしも大きなビジョンを示す情報通信政策を打ち出しているとは限らないが,ADSLを中心にネットワーク・インフラの整備が進み,「安くて速い」環境に近付いている。さらに言えば,グローバルなICT環境のハブとして,データ・センターを置く動きも活発になってきている。最近,シンガポール,中国の南部などで特に盛んになってきているらしい。通信事業者やシステム・インテグレータは,グローバルでのクラウド・コンピューティング型サービスも立ち上げようとしている。

 一方で,国あるいは地域によっては,まだ相当整備が遅れているところもあるようだ。アジアなどでは,街中で人の頭の高さにまで通信ケーブルが垂れ下がっている場所があったり,地中に埋めたはずのケーブルが露出しているところがあったりという具合だ。

 企業がグローバル展開を進める一方で,こうした事情がどこまで改善されてきたか。ブロードバンド環境はどの程度整ってきているか。最新状況はなかなかつかみにくい。そこで日経コミュニケーションでは,「グローバルICTセミナー」を企画した。海外に拠点を新規展開,あるいは拡大しようとお考えの方はもちろん,既にグローバル・ネットワークを運用している企業の方も,最新のクラウド・コンピューティング動向など参考になる情報があるかと思う。ぜひご参加いただきたい。