App StoreからのiPhoneアプリケーションのダウンロード件数がこの1月、ついに30億件を超えた(関連記事)。2009年9月に20億件を超えたばかりなので、ものすごいペースである。電車の中などで、iPhoneを操作している人を見かけることも珍しくなくなった。

 このiPhoneを開発・販売する米Appleは、今や名実ともにIT業界の盟主となった米Googleにとって目の上のたんこぶだ。なぜならGoogleのサービスの多くはWebブラウザの利用を前提としているのに対し、iPhoneはブラウザとしてSafariが付属しているものの、基本的には専用アプリケーションの利用を前提としたデバイスだからだ。Googleのビジネスモデルの根幹であるブラウザを経由した広告配信が、iPhoneの世界では閉め出されてしまう。

 米Forrester Researchの調査によれば、2009年の時点でiPhoneをはじめとするスマートフォンは携帯電話市場の17%を占めており、さらに「2010年が真のスマートフォンの年になると考えている」という(関連記事)。スマートフォンとしてはiPhoneだけではなく、Windows Mobile端末やBlackBerryがあるし、次世代モバイル端末という意味では米Amazon.comの電子書籍リーダーKindleもその一角を占める存在になるだろう。次世代モバイル端末の浸透という形で、“脱PC”“脱ブラウザ”の流れが加速していくことは間違いない。この市場で置いてけぼりを食うことは、Googleとしては何としても避けなければならない。

 これに対してGoogleは、三つの施策でこの市場に食い込もうとしている。

 一つは、アプリケーションの投入。例えば、iPhoneやWindows Mobile、BlackBerry用にGoogle Mobile Appというアプリケーションを公開し、Googleへの導線をスマートフォン上に作っている(関連記事)。これは端末側から見てキラー・アプリと言える存在である。ただし、iPhoneであればAppleによる審査を通過しなければアプリケーションをアップデートできないなど各ベンダーが定めるプラットフォームの制約に縛られる。iPhone上の音声通話アプリケーションGoogle Voiceの登録に当たっては、同アプリケーションが非公開APIを利用していることを理由にApp Storeへの登録を拒絶されていたことが話題になった。そこで、二つめと三つめの施策が意味を持ってくる。

 二つめの施策は、言うまでもなくAndroidとAndroid Marketだ。これにより、自らが端末のインフラとアプリケーションの流通マーケットを押さえてしまう。Androidはスマートフォンの中では後発組で話題先行の感があるが、ソニー・エリクソン(関連記事)やシャープ(関連記事)といった有力メーカーによる端末投入が控えており、2010年にブレイクする可能性は大いにある。1月5日には、Google自らが台湾HTCと共同で開発したスマートフォン「Nexus One」を発表している(関連記事)。