この連載では、「ダメに見せないことで評価を高める」ための仕事術を扱っている。前回は11のネガティブ特性の一番目である「先を読まない、深読みしない、刹那主義」で、「先が読めない」人は損をすることを説明した。11のネガティブ特性は以下の通りである。

  1. 先を読まない、深読みしない、刹那主義
  2. 主体性がない、受け身である
  3. うっかりが多い、思慮が浅い
  4. 無責任、逃げ腰体質
  5. 本質が語れない、理解が浅い
  6. ひと言で語れない、話が冗長
  7. 抽象的、具体性がない、表面的
  8. 説得力がない、納得感が得られない
  9. 仕事が進まない、放置体質
  10. 言いたいことが不明、論点が絞れない、話が拡散
  11. 駆け引きできない、せっかち、期を待てない

 今回から、「先を読まない、深読みしない、刹那主義」の人をどのように矯正するかに話を進める。「マインドセット」「スキルセット」研修の考え方と、特にマインドセットを習得する際の障害になる「メンタルブロック」について説明する。

 これらは一見、「抽象的でつまらないもの」あるいは「精神面の格言にすぎない非論理的なもの」と感じられるかもしれない。しかし、ネガティブ特性を矯正する際には非常に重要なことなので、ぜひ、お読みいただきたいと思う。

自分の常識を変えたがらない

 筆者は10年前から会社で実務を担当するかたわら、教育コンサルタントとしてのさまざまなスキルを習得するための活動を続けてきた。

 筆者が習得したかったのはヒューマンスキル分野の知識やノウハウである。その観点で、数多くのビジネスパーソンの行動や考え方、知識、ノウハウを観察し、教育カリキュラムとして体系化する活動を行ってきた。

 この経験から得た大事な結論がある。それは以下のようなものだ。

人は「自分の常識」を変えたがらない。しかし、スキルを向上させたいのであれば、「自分の常識」を変えていく必要がある

 ここでいう自分の常識とは、仕事をする上で必要になる自分の行動規範や意思決定パターン、行動の判断基準、思想、正しいと考える信念などを指す。

 筆者が得た結論を見て、読者の皆さんはどう思われるだろうか。ごくありふれた言葉だと感じるかもしれない。それでも、これが筆者が10年間の活動を通じて到達した一つの結論である。

 スキルを向上させるには、変えたくないと思っている自分の常識を何とか変えていくしかない。筆者は、それぞれの人が持つ常識を変えるための教育体系や教材を研究、開発してきた。

 どんなに優秀でも、常識を変えられない、変えようとしない人は必ずいる。そういう人はどうなるのか。一つの事例を紹介しよう。