今年11月、取材の合間を縫って、行政刷新会議「事業仕分け」の現場を訪れた。

 「なぜ世界一を目指すのですか? 2位ではダメなんですか」。民主党・蓮舫参議院議員の発言などで話題になった事業仕分けだが、正直いって、必要な予算なのか、そうでないのかということを決めるのは難しい。しかし、あえてその難題に挑戦しているところを公開することで、さまざまな反響を呼んだ。

 本当に無駄な予算を削るために仕分けをするわけだが、政治パフォーマンスの一環ともいえる。少なくとも民主党を中心とする現政権が、前政権に比べてよくやっていることを国民にアピールするには、絶好の舞台だったのではないか。事業仕分けの現場は、まさに「リアル感のあるイベント」であり、テレビのワイドショー番組が好みそうな「劇場」と化していた。

 予算の話だけに、「維持する」のか、「削減」するか、はたまた「見送る」のか、結果そのものははっきりしている。しかも、金額そのものが大きいので、インパクトがある。だからついついその成り行きを追いかけてしまうのかもしれない。

 仕分けの基準は、「どうみても無駄なもの」、「将来はともかく、今は必要ないもの」、「あえて国の予算を使ってやる必要なもの」かどうかだった。一つひとつの仕分け作業は1時間程度しかないので、テキパキやらないと終わらない。どう裁くのか、文字通りお手並み拝見といったところだった。

仕分ける政治家と評価委員も、問いただされる官僚も、見識が問われる

 政治家や評価委員がどう突っ込むのか、興味深かった。何を残し、何を削減し、何を見送るのか、問いただすほうの民主党議員や評価委員も、答えるほうの官僚も、見識が問われる。まさに真剣勝負なので、「朝まで生テレビ!」並みの面白さ、ワクワク感があった。

 何でもそうだが、「生」だと何が起こるか分からないという面白さがある。緊迫感のなかで、いわゆるハプニングが起きる。失言はもとより、自信を持って突っ込んだつもりが、あっさりとかわされたり。まともに反論できず、立ち往生したり。答えになっていないことをダラダラと話し出したり、といった具合だ。

 11月25日(水)午後に行われた「全国学力テスト」(予算事業名は全国的な学力調査の実施)に関する仕分け作業では、評価委員である藤原和博氏(東京学芸大学客員教授/大阪府知事特別顧問)の独壇場だった。小学校6年生の国語・算数および中学校3年生の国語・数学の学力を測るために過去3年やってきた全国学力テストは、今後何のためにやるのか、というのが大きなポイントであった。藤原氏の意見は明解だった。

 「学力の経年変化を見るために調査すべきことは、同じテスト問題を毎年実施すること。その代わり、現行のようにテスト問題を公開せず、非公開とする」

 藤原氏は、この考え方を基に、現行のやり方に対する問題点を指摘し、「同じテスト問題を使わない現行のやり方では学力の経年変化を見ることはできませんが、いかがでしょうか?」と鋭く切り込んだ。官僚は回りくどい説明に終始。いかにも苦しい答弁が何度か続いた。あげくの果てに、藤原氏が「私の質問にちゃんと答えてくださいよ!」と語気を強める場面があった。

 やり取りを一部始終見ていたが、正直言って官僚は藤原氏の質問にまともに答えていない。官僚のもたつき振りは、本当に情けない感じがした。

 今回、学力テストを実施する学校の抽出率を40%にして、前回に比べて約21億円削減して予算を作ったという。しかし、蓮舫議員からの「抽出率40%の根拠を教えてください。抽出率5%で十分ではないでしょうか」との指摘に対しても、まともな回答がなかった。これでは、予算が削減されても当然かもしれない。