「ICTサービスのユニクロを目指す」。

 日本ユニシスで、アウトソーシングやクラウド・サービスなどを展開するICTサービス部門の長を務める角泰志常務執行役員の言葉である。その心は「高品質なクラウド・サービスを低料金で提供すること」という。

 日本ユニシスは2011年度にクラウド・サービスで400億円を稼ぎ出す計画だ。角氏は「目標達成のために、全社一丸となって取り組む」と意気込む。システム構築の売り上げが落ち込むなか、クラウド・サービスは数少ない成長分野である。この10年以上、売上高3000億円前後で伸び悩んでいる日本ユニシスは、ここに飛躍のチャンスを見出そうとしている。

 経営の安定化を図るうえでも、システム構築ビジネスからストック型ビジネスへの転換は重要である。システム開発は一過性のビジネスだ。次々に新しい案件を獲得しなければならず、ビジネスモデルとしては不安定なものだ。これに対して、クラウド・サービスなどのストック型事業は、年々売り上げが積み上がる。ユーザーとの関係も長期化する。

 ただし、長年システム構築を提案してきた組織が、サービス利用を提案する文化に切り替えられるかどうかが課題になる。角氏は「安易にシステム構築を提案しがちな企業体質を改める」と語る。

 振り返れば日本ユニシスは元々、ストック型で収益を確保していた。例えばメインフレームのレンタル事業で、1970年代後半のピーク時には、売り上げの7割を稼ぎ出すほどだった。だがその後、厳しい経営状況に陥り、豊富な資金が必要なレンタル事業を徐々に縮小。日本ユニシスの市場シェアもわずかになってしまった。

 だがここに至っては、市場シェアが小さいことがクラウド・サービス事業の追い風になっている。富士通やNECなどの大手ITベンダーは、自社製サーバーやストレージの販売に影響を及ぼす可能性のあるクラウドに慎重な姿勢をみせているからだ。その間に日本ユニシスは、「他社ユーザーを積極的に攻める」(角氏)。

 同社のクラウド・サービスは2008年10月に始まった。2009年10月までの1年間で30ユーザーから計50の案件を受注したというが、「クラウド・サービスを希望するユーザーは増えている」と角氏は語る。厳しい経営環境によりITコスト削減のニーズがかつてなく高まり、多数のサーバーの運用コストが大きな負担になっていることが追い風だ。多くのユーザーがクラウドに抱く不安感を払拭するため、情報セキュリティなどデータの安全性を高める機能強化を図るとともに、角氏中心のトップセールスで攻勢をかけている。

ユーザーは1時間50セントという価格を知っている

 クラウド・サービスで多くのユーザーを獲得するカギは価格にもある。「ユーザーは、米アマゾンの1時間50セントという価格を知っている。そこから単純に換算すると、当社のサービスは月額3万~4万円になるが、米アマゾンのサービスにはない機能や付帯サービスの分を考慮して月額6万~7万円という設定にする」(角氏)考えだ。

 例えば、「ICTホスティングサービスCT(Count By Times) 」では、サーバーの利用料金を、1時間ごとのCPU使用率が30%未満の場合は50円/1時間、同30~60%なら60円/1時間、61%以上なら70円/1時間とした。この価格設定で、中小企業ユーザーの獲得を狙う。

 この料金で大きな売り上げを確保するのは難しいように思えるが、まずは月額数万円という小規模な利用から始め、徐々にクラウドへの関心を高めてもらうという。「確かに最初は針の穴だが、どんどん大きくなる。実際に使ってもらえば、この程度の料金でこれぐらいのことができるのかと、利点を分かってもらえるだろう」(角氏)。

 2011年度には月額数万円から数億円まで、広範な規模のユーザーを合計1000社程度獲得するのが目標だ。その先は1万社の獲得を目指して、中小企業開拓とアジア進出の計画も練っている。データセンターも、現在の東京に加えて、北海道、大阪、九州に急ぎ設置するという。