情シ部が真に企業の情報戦略部門になるためには少なくとも解決しなければならないものが三つある。それは「技術の空洞化の問題」「情シ部員の意識の問題」「戦略的人事の問題」である---と前回,主張した。そして,そのうちの一つ“技術の空洞化”に対する意見を述べた。読者の方々からもたくさんコメントを頂いた。さて「技術の空洞化」の次の問題が「情シ部員の意識の問題」と「戦略的人事の問題」である。今回は,この二つの問題を取り上げる。

部員の意識改革を図れ

 情シ部が企業の情報戦略を立てて全社の情報化を推進するには,情シ部の人にそれなりの自覚が必要である。自覚だけでなく,営業部門や管理部門,生産部門など利用部門のシステム化を適切に指導・リードし相談相手になることも重要である。システム開発や保守や運用にかかわる諸々の事項をしっかり行なうことはもちろんである。

 歴史的に見ると,企業がコンピュータを使い始めた40~50年前は,情報戦略という言葉はなかったものの,情シ部門は利用部門から頼りにされる燃える集団だった。利用部門のシステム化を適切に指導し,一体となってシステム化を行なっていた。積極的に相談相手にもなっていた。

 今の企業の情シ部の利用部門に対する姿勢やスタンスはどうか。それは決して芳しいものとは言えない。情シ部員の中には,利用部門との会話で3文字の専門用語を散りばめて難しいことを言ったり,「ユーザー部門はコンピュータを知らない。要件も決められない。もっと勉強してもらわないと困る」と批判したりする人が結構いる。自分たちが利用部門向けの講習や要件定義のやり方を指導していればまだしも,それもやらないでだ。

 また,「○○部門は無理なことばかり言う」とか「システム化が進まないのは××部門の意識が低いからだ」などと言う人もいる。管理者の中にさえそのようなことを言う人がいる。利用部門に対する不平・不満を含めた後ろ向きな言葉が飛び交っている会社は結構ある。なぜこのようなことを言ってしまうのか。それは,情シ部が自助努力によって状況を変えようとすることなく,利用部門の努力に依存する受身の姿勢を取っているからである。それはあたかもIT企業のSEとユーザーとの関係に似ている。

 今の情シ部がシステム開発や保守・運用で精一杯なのは分かる。批判したい気持ちも分かる。だが,利用部門に対してこのような受身の姿勢を取っていては,利用部門を指導・リードすることはとてもではない。利用部門を引っ張って情報化を推進するには情シ部の“意識改革”が必要である。このままでは「情シ部門は情報戦略部門たれ」「我々は情報戦略部門になるんだ」と言ってみても,しょせん机上の空論である。

 では,そのためにはどうすればよいか。筆者は,情シ部を経営企画室と同じような位置付けにし,「情シ部は会社全体の情報化を推進する行政部門である」と社内で公にすることを提言したい。そうすれば,情シ部員は「情シ部はこれまでのような一部門ではないんだ。社長のスタッフ部門だ。会社全体のことを考えて仕事をしなければならない」と自分たちの立場を自覚する。そして部員の意識が「利用部門を引っ張って情報化を進めるのが我々の仕事だ。利用部門がITにうとかったり要件を決めれなかったりするのは,我々のガイドが不足しているからだ」と意識が変わっていくだろう。

 そのような立場に置かれると,情シ部員は利用部門を批判できなくなる。「うまくいかないのは利用部門が○○だからだ」などと他人の責任して逃げられなくなる。そうすることで,情シ部は受身体質から脱皮できるだろう。組織の位置付けを変えるのは大変だと思うが,口で100回言うよりも形で見せたほうがよほど早い。やってみても損はない。