東京周辺と成田空港を結ぶJR東日本の「成田エクスプレス」。この成田エクスプレスに,2009年10月1日から新型車両E259系が導入された。もちろん,ここで取り上げたいのは“鉄”の話ではない。この新型成田エクスプレスでは,車内で無線LANを利用したインターネット・アクセスが可能になっているのだ。新型成田エクスプレスにちょうど乗る機会があったので,このインターネット・アクセス環境を早速試してみた。

車両からWiMAX経由でインターネットに接続

図1●新型成田エクスプレスに導入された無線LANインターネット接続のしくみ
図1●新型成田エクスプレスに導入された無線LANインターネット接続のしくみ
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 まず,新型成田エクスプレスに導入されたインターネット・アクセスのしくみを確認してみよう(図1)。新型成田エクスプレスでは車内に無線LANアクセスポイントを搭載。このアクセスポイントから車両の屋根に設置したアンテナを経由して,UQコミュニケーションズのUQ WiMAX網に接続し,インターネットと通信する。つまり,成田エクスプレスが走る路線の沿線にUQ WiMAXの基地局を設置し,それを車内の無線LAN環境から利用するという形だ。

 なお,この車内無線LANを利用するためには,UQ WiMAXの無料オプションである「UQ Wi-Fi」か,ソフトバンクテレコムの「BBモバイルポイント」を契約しておく必要がある。今回はUQ Wi-Fiで試してみた。

 まず,東京駅に停車中の新型成田エクスプレスの車内で,無線LANの接続ダイアログを開くと,「UQ_Wi-Fi」というSSIDの接続先が見える(図2)。ここに接続しようとするとWEPキーの入力を要求されるので,UQ Wi-Fiのオプションを申し込んだときの情報を入力する。

 それからWebブラウザを立ち上げると,UQ Wi-Fiのログイン画面が表示される(図3)。ここに,UQ Wi-Fi契約時に通知されたログインIDとパスワードを入力すると認証されて,Webをはじめとするインターネット通信が可能になる。この手順は,すでに都営地下鉄などでサービス開始しているUQ Wi-Fiの接続手順と同じなので,既存ユーザーはすぐに利用できるだろう。

図2●新型成田エクスプレスの車内で無線LAN接続を開いてみると「UQ_Wi-Fi」というSSIDのアクセスポイントが見える
図2●新型成田エクスプレスの車内で無線LAN接続を開いてみると「UQ_Wi-Fi」というSSIDのアクセスポイントが見える
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図3●アクセスポイント接続後にWebブラウザを起動するとUQ Wi-Fiへのログイン画面が表示される
図3●アクセスポイント接続後にWebブラウザを起動するとUQ Wi-Fiへのログイン画面が表示される
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上り下りとも500kbps超の速度で通信可能

図4●東京駅で接続直後に測ってみると下りで500kビット/秒を超える通信速度が確認できた(BNRスピードテストを使用)
図4●東京駅で接続直後に測ってみると下りで500kビット/秒を超える通信速度が確認できた(BNRスピードテストを使用)
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 接続して,さっそく気になる通信速度を確認してみた。すると,500kビット/秒を超える速度で下りの通信ができていることがわかった(図4)。この通信速度は,通常のWebアクセスなどの利用ではほとんど問題ないレベルである。ITproのWebページであれば快適に表示される。もちろん電子メールの送受信もまったく問題ない。

 電車が東京駅を発車してトンネルの中に入っても,少しの間は変わらずに通信できた。JR東日本やUQコミュニケーションズの発表では,トンネル内はサービス圏外のはずだが,トンネルに入ってもすぐに切れるというわけではないようだ。もちろんトンネル内をしばらく走っているうちに,インターネットとの通信が不可能な状態になった。

図5●幕張駅付近で上りの速度を測ってみると約650kビット/秒で通信できていた(BNRスピードテストを使用)
図5●幕張駅付近で上りの速度を測ってみると約650kビット/秒で通信できていた(BNRスピードテストを使用)
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 やがてトンネルから出て地上を走るようになると,再び通信が可能になった。このとき,改めてログインなどをする必要はない。通信速度も東京駅構内とほぼ同じ500k~750kビット/秒と測定された。ちなみに,何度か測定した中でもっとも高速だったのが平井駅周辺で測定したときの約750kビット/秒,もっとも低速だったのが酒々井駅周辺で測定したときの約520kビット/秒だった。トンネル内以外では,ほぼ500kビット/秒の通信速度が期待できると考えてよいだろう。

 なお,念のために,上りについても調べてみたところ,幕張駅周辺で650kビット/秒という通信速度が測定された(図5)。ただし,上りに関しては,ときどきうまく通信できずに測定ができないことがあった。念のために報告しておきたい。

図6●新型成田エクスプレスでは全席のひじ掛けに電源コンセントが付いている
図6●新型成田エクスプレスでは全席のひじ掛けに電源コンセントが付いている
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 ちなみに,新型成田エクスプレスでは全席のひじ掛けの下に電源コンセントが付いている(図6)。一足早く車内インターネット環境を用意したN700系新幹線では,普通車だと基本的に窓際の席にしか電源コンセントが用意されていない。だが,新型成田エクスプレスの場合,窓際かどうかを気にしなくても電源が常に利用できる。インターネット接続と合わせて車内でも快適に仕事ができるといってよいだろう。ただし,東京駅を出ると成田まで約1時間で到着してしまう。パソコンを片付ける時間を考えると,意外とじっくり作業をする時間がないのが残念なくらいだ。