前回の原稿を書いている時,妙なデジャブがありました。もちろん似たようなことは個人ブログにも書いていたりするのですが,「FLOSS(Free/Libre and Open Source Software)だってお金がいるんだよ」という部分はあまり強く書いたことはなく,むしろ「稼げるようにならなきゃいけない」的なことしか書いていないはずです。それにしても,妙なデジャブがあるなと思ってました。よく思い返してみると,これは「福祉とボランティア」について文章を書いていた,学生時代によく言っていたことでした。

 世間一般では,「社会福祉」について,特に障害者や子供が絡むものには,なぜか「清貧」を求める傾向にあります。そういったことをあまりに求められていた人たちが「福祉だって金がいるんだよ」と言っていて,いろいろ納得したものでした。

 「社会福祉」もそうなんですが,どうして日本人って「いいこと」をしている人たちに「清い」ことや「貧しいこと」を求めるのでしょうか。そう言えば,手話通訳の「アルバイト」した時にも,周囲の人たちに随分いろいろと言われましたね。「ボランティアなんだからタダでやれ」とか。FLOSSにしても福祉にしても,金と暇がある人だけがやっていたのでは,すぐに供給の限界が来ると思うのですが。

オープンソース振興政策

 景気のせいなのか,世の中の流れから自然な結果なのか,少し前から政府系機関や自治体がオープンソース振興のための政策を行なうようになりました。行われるようになった背景は様々ですが,共通なところを要約すれば,「プロプライエタリなソフトウエアだけでは十分ではないから,FLOSSに補助金を出して作らせる」ということになります。そのために,FLOSSにも「使いものになるソフトウエア」を増やして,選択肢を増やそうというのが狙いです。この「使いものになるソフトウエア」についての基準は,主導する機関によって様々ですが,その多くはプロプライエタリなソフトウエアを補完したり,代替したりするものです。

 よく知られているのはIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)ですが,その気で探してみるといろいろな機関が主体になって行っています。少し前までは,政府系機関での支援が主でしたが,最近になって自治体レベルのものも増えてきました。特に有名なものは,松江市と北海道でしょうか。もちろんそれ以外の自治体も結構頑張っています。本サイトの中を探してみれば,様々な機関が主体となった「オープンソース育成」を見つけることができると思います。「未踏」のように直接的にFLOSSとうたってないものであっても,FLOSSのプロジェクトも対象となるものもあります。

 また,直接的な育成活動ではありませんが,「日本OSS貢献者賞」というアワードもあります。今年もつい先日発表されました。

2009年日本OSS貢献者賞に初の女性やドキュメント貢献者,奨励賞に高校生や高校も

 「オープンソース貢献者賞」については,去年いろいろ書いているので,そちらを見てもらうと良いかと思います。

「オープンソースへの貢献」って? - 生越昌己のオープンソースGTD

 これらは,主体となる機関や内容に違いはありますが,実も蓋もない言い方をすれば,まさしく副題に書いているように,「お金を出す」ということです(「貢献者賞」はあまり金になりませんが)。

 このようにオープンソース振興策はいくつもあります。その共通点を挙げるなら,

・政府系機関や自治体がプロジェクトに補助金を出す形態
・新規開発が多いが,施策者が「打率」を気にするところは改良プロジェクトもある
・あくまでも補助事業であって,調達とは直接関係ない

 あたりでしょうか。この他,自治体のものだと,

・地元企業に発注する

 というしばりがあることが普通です。つまり,地域振興とセットだということです。

 かつての,「オープンソース? 何それ?」という時代が終わって,いろいろな機関が補助金を出してくれるのは大変ありがたいことです。資金の基盤ができるということは,安心して開発に取り組めるということになります。哲学や背景といった細かいことを抜きに,何でもお金のネタになるのは悪いことではありませんね。

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