自治体の職員個人を支援するための情報化はかなり進んだものの、全庁にまたがる組織的な情報化は遅々として進まない---。日経BPガバメントテクノロジーが全国の市区町村を対象に実施した「e都市ランキング2009」の調査結果から、このような姿が浮き彫りになった(調査の概要はこちら)。

 この調査を基に、2009年10月1日に発行する日経BPガバメントテクノロジー(2009年秋号)では、特集に分析記事を掲載した。ここでは、電子自治体と庁内の情報化に関する部分の骨子をお伝えしよう。

「名ばかりCIO」では限界

 今回の調査では、「1人1台以上のパソコンを用意」、「庁外のウェブページを全員が閲覧可」という自治体が9割以上に達し、「個人専用のメールアドレス」も8割近くが整備しているという結果になった(図1)。

図1●庁内のIT導入・IT活用状況
図1●庁内のIT導入・IT活用状況

 いずれも昨年と大きな変わりはないが、それぞれ約1ポイントずつ数字を伸ばしている。小規模な自治体を含めて、職員の個々が業務を進める上での情報化支援はずいぶんと整備されてきた。

 その一方で、自動交付機や総合窓口、コールセンターの導入はいずれも2割以下。組織的な対応が必要な行政サービスの情報化にはあまり進展が見られない。

 パソコンの導入やインターネット環境の整備など、個人の業務を支援する情報化は、IT部門が主導する領域である。これに対し、組織的な情報化はIT部門だけでは推進できない。既存業務を見直す必要もあるため、現課の協力が欠かせない。むしろ、現課から声が挙がらなければ、情報化を推進できないだろう。

 自治体に限らず、業務の現場を巻き込んだ情報化を推進するには、強力なリーダーシップが必要であり、この任を果たすのがCIO(最高情報責任者)である。

 自治体の場合、ITに精通していない副知事などの役職者がCIOに就いているところも多い。このような自治体では、IT部門の長などがCIOに近い仕事をこなすことになる。インフラの整備やコミュニケーションツールの導入などIT部門が主導できる領域では、この体制でもあまり問題は起きない。だが、現課を巻き込んだ情報化では不都合が生じる場合が多い。現課の業務を改革するためのリーダーシップに欠けるからだ。

 それでは、実際にはどのような体制で情報化を推進しているのか。これを尋ねたのが図2である。

図2●情報化推進の庁内体制(組織、担当者の設置)
図2●情報化推進の庁内体制(組織、担当者の設置)

 現課を巻き込んで情報化するには、図の一番上にある「行政の情報化に関する庁内横断の組織」が不可欠。今回の調査では、この体制を築いている自治体は58.7%という結果になった。

 ただし、組織が存在しているのと、組織がきちんと機能しているのは別物。CIOの肩書きを持った役職者が参加した上で、この組織をきちんと機能させていけば、現課の業務改革につながる情報化に結びつくのではないだろうか。