2009年10月,Linuxの作者であるLinus Torvalds氏が来日する。2009年10月18日から23日までの1週間に東京で行われるKernel SummitとJapan Linux Symposium,そして北東アジアOSS推進フォーラムへの出席が目的だ(関連記事:Linusが日本にやってくる)。

 Torvlads氏の来日はこれが初めてではない。最初にTorvlads氏が日本に訪れたのは1995年,14年前のことだ。京都大学で行われたTorvalds氏の来日講演会の内容が,小島三弘氏によって記録され翻訳されている(Linus Torvalds 来日講演会 1995/12/04)。また,その際のビデオも公開されている(Linus来日公演ビデオ)。

 95年といえば,Windows 95が発売された年だ。記者もLinuxの存在を知らず,無償で利用できるソフトウエアが企業や社会システムの中核で使われるなど予想もしていなかった。当時のLinuxは,純粋に趣味で開発されたOSだった。Torvalds氏は「Microsoftから接触されたことはあるか?」という会場からの質問に対して「Microsoftは我々のことなんか気にしてないんじゃないかな? Microsoftのユーザーは5000万人,Linuxのユーザーは推定で50万ってところだから,彼らのユーザーの1%に過ぎないしね。でも,将来は彼らもLinuxのことを脅威に感じてくれればいいなと思うよ」とユーモアを交えて答えている。

 それから14年,Linuxは今,東京証券取引所やシカゴマーカンタイル取引所のシステムがその上で動き,Googleを始めとするクラウド・サービスを支え,携帯電話やデジタルTVのOSとなり,億を超えるユーザーが利用するようになった。Torvalds氏が冗談で語ったことが現実となり,MicrosoftはLinuxを脅威と見なすようになった。ただし,Microsoftも現在は共存せざるを得ないと考え,そのための道を探ろうとしているように見える。

 こうして見るとやはり,Linuxが起こしたことは一種の革命のように思える。しかし講演録やビデオから垣間見えるTorvalds氏の印象は,いつもほほ笑みを絶やさない,柔和で穏やかな学者のようで,とても革命を起こした人物には見えない。それは今も変わらない。Torvalds氏は昨年ブログを始めたが,そこにはやはり穏やかなユーモアに満ちた空気が流れている。

 ただし,技術的な話題については時に直裁だ。Linuxの開発に関する技術的な方針の決定は「民主主義ではなく,Linusによる独裁」(Torvalds氏がフェローとして在籍するThe Linux Foundationのエグゼクティブ・ディレクタ Jim Zemlin氏)で行われている。

 ITのあり方は,Linuxの普及により間違いなく大きく変わった。しかし,なぜそうなったのか,Torvalds氏のどのような資質や行動がそれを可能にしたのかは謎に満ちているように思える。Torvalds氏らが隠そうしているわけではなく,逆にすべての開発プロセスはメーリング・リストへの議論や投稿の形でオープンにされている。しかし,その開発プロセスやルールを表面的に真似たところで,Linuxのような存在を作り出すことはできないだろう。

 そして,クラウド・コンピューティングや,iPhoneやAndroidなどのスマートフォンがオープンソース・ソフトウエア抜きには成立しなかったように,おそらくLinuxやオープンソースは,ITのもたらす変革を支える存在であり続けるだろう。Linuxやオープンソースは,これから世界をどのように変えていくのだろうか。

 どのような質問を投げかければその“謎”の本質に迫れるのか。読者の皆さんのお知恵をお借りできないだろうか。Torvalds氏の来日にあたっては記者会見なども予定されているが,あなたなたら,Torvalds氏にどんな質問をしてみたいだろうか。下記のフォームから質問を寄せいただきたい。投稿をお待ちしている。

Q01 あなたとLinuxとのかかわりを教えてください。(複数回答)

LinuxカーネルやLinuxディストリビューションの開発に参加している
Linuxを仕事で使っている
Linuxを趣味で使っている
Linux上で動くシステムやサービスを使っている
Linuxは使っていない
その他 

Q02 Linus Torvalds氏に聞いてみたいことを教えてください。