今書いている「オープンソースへの参加は難しくない」シリーズは,一応難易度の低い順から書いているつもりです。もちろん,「難易度」は人によって違いますから,このステップがそのまま誰にでも適用できるわけではありませんが,だいたいこんな順番でむずかしくなっていくのかなぁと思っていただけるとよいかと思います。

オープンソースは無償ソフト?

 「いわゆるフリーソフト」と「無償ソフト」の話題は,もう20年以上続いている話題ではないかと思います。ここで「いわゆるフリーソフト」と書いたのは,Richard M. Stallmanの言う「free software」に限らず,Public Domain SoftwareやFree/Libre and Open Source Software(FLOSS),かつて「フリーソフトウエア」とか「オンラインソフトウエア」とか呼ばれていたものも含む,「コピー自由でライセンス料を取られないソフトウエア」のことです。

 今はFLOSSのライセンスの種類も多いとは言え限られたものですが,かつては「ソフトウエアの数だけライセンスがある」ものでした。20世紀に公開されたソフトウエア(今でもネット上には大量にあります)のライセンスに関する文書を読めば,そのことは分かると思います。それはよいとか悪いとかというものではなく,そういった時代だったわけです。そういったものが面倒臭いということで,「メジャーなライセンス」を採用するようになり,「いわゆるフリーソフト」だったものが,よりわかりやすく分類されるようになりました。

 という歴史の話はおいておくとして,こういった「いわゆるフリーソフト」を配布することについて,常に「無償であるべき」という言葉がついて回っていました。

 例えば,かつては「いわゆるフリーソフト」がCD-ROMで販売されていました(最近はとんと見なくなりましたね)。この「CD-ROMの販売」について,いろいろ噛みついて来ている人達がいましたし,ソフトウエアのライセンスにもそのことを書いているものが少なからずありました。いろいろ細かいことはありますが,要するに「無料で配っているものを集めて有料で販売するのは何事だ」という趣旨です。ですから,ソフトウエアによっては「販売するCD-ROMへの掲載お断わり」的な文章が書いてあったりもしました。かつて私がかかわった「FM-TOWNS用GNU移植CD-ROM (タイトル忘れました)」や「Linux + JE CD-ROM」についても,あれやこれや言われたものです。「CD-ROM販売はフリーソフトの精神に反する」「俺達が無償で育てたもので商売するのか」というようなことです*1

 その時によく言われたのが「ネットからダウンロードすればタダ」という言葉です。これも不思議なもので,その当時はADSLもなければテレホーダイ*2すらない時代ですから,「ネットからダウンロード」するのは無料ではできません。また,そのファイルを置いているサービスも無料では使えないわけですから,そういったことについてはあれこれ言わないのに,「CD-ROM」という形になったものが有料だということにあれこれ言われスジアイはないものなのになぁ思っていたものです。まぁ逆に言えば,そういったところにビジネスチャンスはあるのですが,当時は「困った人達だなぁ」と思うしかありませんでした。

 このように,「ライセンス料が不要」ということと,「価格が無料」であることは大昔から(意図的に?)混同されて来ました。

 幸いなことに,「オープンソース」という言葉が出て来てからは,FLOSSについてはこの誤解はかなり解けて来てくれました。つまり,「いわゆるフリーソフト」で金を稼ぐことについて,目くじら立てられることも少なくなりました。もっとも,業界系のメディアでも,いまだに「無償ソフト」とか書いてあるものを発見して脱力することもありますが。

*1 と言えばニコニコ動画からデビューした人達への攻撃も同じ臭いがありますね
*2 今や完全に死語ですね