世界最小の放送局、出版社、新聞社こそが、これからのパソコンが目指す方向ではないか。入力、加工、記録、分析するよりも、リアルタイムで情報を発信、公開、共有する機能が重要になってくる。こうした面の使い勝手を追求したパソコンを作るべきではないか。少なくとも筆者はこう考える。

 放送局、出版社、新聞社は、自らが記録、あるいは作成した動画や画像、文字といった情報を不特定多数に提供する。旧来の出版社や新聞社とは異なり、紙ではなく電子媒体で情報を提供する。これを1台のパソコンでやってのけようということである。

 世界最小の放送局や出版社、新聞社の「世界最小」とは、自分の手の平の上にあるという意味だ。インターネットに常時接続できるモバイル利用が可能なパソコン、重さにして1キロ程度のハードウエアが、放送局や出版社、新聞社の機能を果たせば当然、世界最小になる。

利用者の関心は発信、公開、共有に

 既にパソコンの使い手は、自分だけの放送局や出版社、新聞社を持つことに喜びを感じつつある。

 各種のブログやデジタル写真や動画の共有サービス、Twitter(ついったー)などの利用者は、情報の作成ではなく、公開や共有に喜びを感じている。多くのパソコンの利用者がこれらのサービスを使っていることに異論のある読者はほとんどいないだろう。

 最近の、読者の皆さんのパソコンの使い方を考えてほしい。Webブラウザや電子メール、インスタントメッセンジャーなどインターネットを前提にしたサービスに、1台のパソコンのなかで完結できるオフィス・ソフトなどよりも時間を割いていないだろうか。

 利用者の目的が発信、公開、共有に移行しつつあるのだから、パソコンがこれを反映したものになるのは当然のことではないだろうか。具体的に言えば、より軽く簡単に持ち運べ、動画のような大容量の情報を記録でき、インターネットを経由した配信機能を備え、大容量のデータ通信が可能で、丸一日にわたって利用し続けることができるパソコンである。

 米マイクロソフトのCEO(最高経営責任者)だったビル・ゲイツは昔、パソコンが実現すべき姿について「Information at Your Fingertips」という言葉で表現したことがある。この言葉にならえば、これからのパソコンが目指すべき世界は「Information from Your Fingertips」ということになるかもしれない。