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IT事業と知的財産権法[12]法律の使い分けでソフトウエア(プログラム)の保護を図る

2009/10/14

 ソフトウエアの保護を図るための法律として,特許法,著作権法,不正競争防止法等を紹介してきましたが,いずれの方法も一長一短があります。ここでは,それぞれの法律を利用する場合のメリット・デメリットについて言及しようと思います。

1 特許権と著作権との比較

 まず,特許権と著作権を比較してみましょう。特許権で保護されるのは発明という技術思想です。これに対し,著作権で保護されるのは表現です。ソフトウエアの分野でいえば,特許権で保護されるプログラムの発明に対し,これを表現したプログラムは無数に存在しうることになります。図1は特許権で保護される発明と,著作権で保護される表現の関係を図示したものです。

図1●プログラムの発明を実施している状況の概念図
図1●プログラムの発明を実施している状況の概念図

 特許権で保護されるのは発明ですから,図1の状況で考えた場合,競合他社が,プログラムA,B,Cのいずれを実施していたとしても,特許請求の範囲に含まれる限り特許権に基づいて権利行使することができます。しかし,特許権ではなく著作権での保護を図ろうとすると,自社の製品が,プログラムAを採用していた場合,競合他社が,ソースコードとしては全くことなるプログラムBやプログラムCを採用していたとすると,権利行使できません。

 したがって,特許権による保護を図る方が,差止や損害賠償請求といった法律的な効果を付与されやすいといえるでしょう。

 しかし,特許権で保護するためには,特許出願が必要であり,出願にかかる費用は必ずしも低額とは言えません。また,特許権の侵害訴訟を提起した場合,裁判所において無効と判断されてしまうリスクもあります。

 これに対し,著作権の場合には,創作と同時に権利が発生するので,出願費用はかかりませんし,特許権のように無効と判断されることはありません。また,特許法上の発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」と規定され,進歩性がないと特許要件を具備しないとされているのに対し,著作権で保護されるために必要となる創作性は,個性が発揮されていれば足ります。

 上記のような状況を考慮すると,ソースコードの対比が可能な場合や,デッドコピーされているような場合には著作権による保護を検討し,著作権では保護できないという場合に特許権に基づく権利行使を検討する,ということになるのではないかと思います。

 より具体的に言うと,退職従業員が勤務していた会社のソースコードを流用して自己の事業で使用しており,プログラム上の表現が維持されていることが予想される場合や,ビジネスソフトを無断でインストールしている場合等は,著作権法による保護に適し,全くの第三者である競合他社の製品を市場から排除することを検討する場面では,特許権の方が有効に作用する場合が多いでしょう。

>> 2 著作権と不正競争防止法上の営業秘密の比較...
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著者プロフィール

松島 淳也(まつしま じゅんや)
 静岡県浜松市出身。1995年3月,早稲田大学理工学部電子通信学科卒業。1997年3月,早稲田大学大学院理工学研究科修了。コンピュータグラフィックスを利用した医学用画像処理の研究に従事。1997年4月,富士通株式会社入社。マイクロプロセッサの開発,電子商取引システムの開発等に従事。2006年10月,弁護士登録,内田・鮫島法律事務所に入所。

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