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議論の前に「誰が決めるのか」を考えよう

2009/09/01

 メールやグループウエアなど,ITを使ったコミュニケーション・ツールが普及するとともに,面と向かって直接会話をしなくても仕事ができるようになりました。私は以前の会社で新入社員だったときに,当時雲の上の存在だった事業部長にメールを送ったことがあるのですが,すぐに返事をもらうことができ,とても嬉しかったのを覚えています。

 対面では気後れしてしまう上司や先輩とも,メールを使えば堂々と議論できるものです。しかし,メールなどで議論をする際に,留意するべきことがあります。私は昔,こんな経験をしました。

議論には意見のまとめ役が必要

 会社の中で,当時はまだ高かったプロジェクタを導入しようという話になり,数社から見積もりを取って比較検討しました。ある人は発売中のA社の製品がよいと言ったのですが,私はB社製品の発売を待って買うべきだと考えました。その場で結論を出すことができず,引き続き議論することになりました。そして,今後は直接会って話し合うのではなく,互いの空き時間を利用して,メールでやり取りしようということになりました。

 相手はA社の製品をすぐ買ってすぐ使いたいと思っているし,私は合理的に考えてB社の製品の発売を待つべきだろうと思っているので,なかなか議論はかみ合いません。相手がメールで送ってきた「A社製品をすぐ買うべき根拠」を端々まで読んでは,揚げ足を取ってひっくり返そうとメールを書いて送り返しました。

 そうすると,またまた相手から反論が返ってきました。今度は私の文章の揚げ足を取られています。私はエキサイトしてきました。座席はそれほど離れていませんので,直接会って話すこともできるのですが,すでにお互い感情的になってしまっており,冷静に話せる自信がありません。

 そんなやり取りが何度も続いた後,私は別の先輩から「まぁまぁ落ち着けよ。相手は先輩だし,一歩下がって聞こうじゃないか」となだめられ,結局は相手の意見に沿って,A社製品をすぐに買うことになりました。私には釈然としない悔しい思いが残りました。

 あのメールのやり取りはなんだったんだろうと,今でも振り返ることがあります。非常に不毛なやり取りでした。かといって,メールを使わず,直接会って話したとしても,うまく進んだとは思えません。ただひとつ確かなのは,「誰が意思決定するべきか,それについての議論がなかった」ことです。

 チームで活動するときは,メンバー同士で意見を交換し,議論し,チームとして意思を決定していかなければなりません。そのとき,「この議論は誰が意思決定するべきなのか」,それが決まっていなければ,議論は単なる主張合戦になり,平行線をたどるのです。

 たいていの議論では,どちらの意見にも必ず何らかの根拠があります。相手の意見が論理的に破綻していると思っても,それはそれでひとつの意見です。皆の意見を聞き,まとめる人がいればよいのです。そうすれば結論は出せます。そして,根拠の薄い意見はそのときには採用されにくくなるのです。エキサイトしているときは,意外とそのことを見落としがちです。

結論の出し方を決めることが大事

 また,先日こんなこともありました。企業をまたがった,あるプロジェクトをスタートさせたのですが,途中でプロジェクトのリーダーを交代させたほうがよいのではないか,そういう意見が出てきました。議論はエキサイトしました。「今のリーダーがよい」「Aさんがよい」と,意見はまっ二つに割れました。

 そこで私は提案をしました。「この議論は非常に難しい。だから,どのように意思決定するのか,まずそれを決めよう」。誰をリーダーにするのかはすぐに決められませんが,どのようにリーダーを決めるのかは先に決められる。まずはそちらを議論しました。その結果,「リーダー候補に所信表明をしてもらって,それから多数決で決めよう」となりました。あとはそのルールに沿って粛々と進め,無事リーダーが決まりました。ルールどおりに進めて決めましたから,参加者にも納得感があり,その後の運営もスムーズです。

 議論の場で意見を主張し合うことも大切ですが,結論の出し方を決めることは,より上位のレベルで重要であり,それが円滑なチームワークをもたらします。「これって,誰が決めるんだっけ?」−−−議論に行き詰まったときは,そんな問いを立ててみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

青野 慶久(あおの よしひさ)
 サイボウズ株式会社代表取締役社長。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後,松下電工株式会社入社,BA・セキュリティシステム事業部営業企画部に在籍。1997年サイボウズ株式会社を愛媛県松山市に設立,取締役副社長に就任。マーケティング担当としてWebグループウエア市場を切り開く。その後,「サイボウズ デヂエ」(旧DBメーカー),「サイボウズガルーン」など,新商品のプロダクトマネージャーとしてビジネスを立ち上げ,事業企画室担当,海外事業担当を務める。2005年4月に代表取締役社長に就任。

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