ちょうど10年前の1999年ころ,筆者はモバイル・コンテンツの開発企業を積極的に取材していた。この年に,iモードなど携帯電話向けのインターネット・サービスが相次ぎ登場。モバイル向けオンライン・サービスが拡大する気配を感じたからだ。

 これが実に面白い。ラスベガスを模したゲームや,釣りを疑似体験できるゲームなど,「やられた」と思うものが次々と登場した。

 新サービスの開発を支えていたのは,現役学生や学校を卒業したばかりの若手社員である。さっきまで雑魚寝していたというマンションの一室で取材したこともある。まさに「寝食を忘れて」開発していたのだ。

 それから10年。彼ら・彼女らは「大人」になり,2008年度に1兆3500億円規模(モバイル・コンテンツ・フォーラム調べ)に成長したモバイル・コンテンツ産業の中核として活躍している。そして今,次の世代が台頭してきたように感じている。

iPhoneやAndroidがターゲット

 モバイル・アプリ開発の「第2世代」と言える新たな世代のターゲットは,このところ注目を集めているiPhoneやAndroidなどである。活躍の舞台が日本だけでなく,世界規模である点は,10年前との大きな違いだ。

 その背景には,偉大な先輩たちと競合しないという考えがあったのかもしれない。しかしそれ以上に,アップルやグーグルなど世界中で利用可能な配信基盤を使うと,100円程度から数万円までと価格的にも幅広いデジタル・コンテンツを世界中に配信できることが大きな魅力になっているようだ。

 世界的に盛り上がる「モバイル・ゴールドラッシュ」の波に乗り,既に数千万円規模の収入を得た開発者もいると聞く。こうした世界中の開発者たちの切磋琢磨が,これまで思いつかなかったような新しいサービスを生み出すのだろう。

 8月28日と29日に開催する「オープンモバイル・コネクションズ ビジネスキャンプ for Android」(主催は慶應義塾大学,NTTドコモ,日経コミュニケーション)の狙いの一つは,「自分も世界を相手に活躍したい」という大きな志を持つ学生を後押しすることである。慶應義塾大学の学生から数人を選抜し,一般の参加者とともにモバイルビジネスのノウハウを学んでもらうことにした。

 モバイル機器を活用したデジタルサイネージや疾病患者のライフサポートなど,多彩なアイデアを持った学生が集まったようだ。同キャンプでは,iモード生みの親として知られる夏野剛氏など著名講師による講演のほか,初級者向けのプログラム講座も用意している。

 不況で就職も厳しい折,学生のみなさんにはこのイベントを弾みに活躍の場を増やしてもらえたら,主催者の一人として嬉しい限りだ。参加者同士の交流を通じて,一般参加の方々と学生が相互に刺激を受け,新しい活動につなげてもらうことも期待している。興味があれば,ぜひこのイベントにご参加いただきたい。