情報漏えいを事前に防止するという観点から,ノート・パソコンの社外持ち出し禁止が一般的になっています。こうした対策は致し方ないと思う半面,せっかくのノート・パソコンの軽量化や大容量バッテリによる長時間駆動が生かされなくなると思うのは記者だけではないでしょう。無論,これまで持ち出せていたノート・パソコンが社外で使えなくなれば,業務効率が落ちるといったマイナスの影響があるのは言うまでもありません。

 そんな中で,これまで通りノート・パソコンを社外で活用し続けるためのさまざまなソフトやサービスが登場しています。具体的には,(1)ノート・パソコンのHDDを暗号化したり重要ファイルを“割符”化したりして情報漏えいを防ぐソフトウエアと,(2)携帯電話やPHSによるモバイル・データ通信を活用して,ノート・パソコンが紛失や盗難に遭っても遠隔地からノート・パソコンを操作できなくしたり,データを消去したりするサービス――です。9月2日~4日に開催する「Security Solution 2009」では,これらのデモをご覧いただける場として「モバイル・セキュリティ・ホットステージ」を開設します。ノート・パソコンだけでなく,最近企業で導入が進みつつあるスマートフォンのセキュリティも併せてご覧いただけます。

 ここで,モバイル・セキュリティ・ホットステージの内容から一部を先出しでご紹介しましょう。前述の(2)の場合,「ノート・パソコンの電源オフ時は使えないのでは?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。モバイル・セキュリティ・ホットステージには,こんな疑問に答える製品やサービスが出展されます。日本アルカテル・ルーセントの「OmniAccess 3500 NLG」と富士通が参考出展する「FMV-LIFEBOOK カスタムメイドオプション」の二つです。前者はNTTドコモの第3世代携帯電話,後者はウィルコムのPHSで通信するという違いはありますが,いずれもパソコンの電源がオフでも機能する点がポイントです。

 日本アルカテル・ルーセントのOmniAccess 3500 NLGは,一見ただのPCカードですが,実はそれ自体が超小型の“パソコン”でもあります。PCカードなのに,データ通信機能だけでなくCPUやメモリー,バッテリを搭載し,中でOSが稼働しています。GPS(全地球測位システム)機能も搭載します。ノート・パソコンの電源がオフでも,Omni-Access 3500 NLG自体はカード内のバッテリで動作し続けます。そのためカードだけで携帯電話網を介して,GPSで取得した位置情報をセンターに送信したり,データ消去などのコマンドを送受信したりすることができます。さらに,「このカードがノート・パソコンから外された場合は,Windowsにログインできなくする」といった設定も可能です。通信の待ち受け時間は約3日間とのことです。

 一方の富士通が参考出展する「FMV-LIFEBOOK カスタムメイドオプション」は,外付けの通信カードを使うアルカテル・ルーセントのソリューションとは異なり,ノート・パソコンに内蔵したPHSデータ通信モジュールを使用します。このモジュール自体の消費電力は約1mAと少なく,ノート・パソコンが搭載するバッテリから給電を受けています。そのためノート・パソコンの電源がオフでも,バッテリの電源容量が残っている限りモジュールは機能し続けます。さらにFMV-LIFEBOOK カスタムメイドオプションは専用BIOSを搭載しています。センター側からPHS網を介してノート・パソコンをロックする指示を出すと,それを受けたノート・パソコンは,BIOSが起動する途中で停止します。OSはロードすらされません。通信の待ち受け時間はパソコン側のバッテリ容量次第ですが,最大2週間程度だそうです。

 ここまで読んで「携帯電話やPHSが圏外時は使えないのでは?」とお考えになった方も多いでしょう。結論からいえば,今回展示される製品やサービスは,いずれもさまざまな工夫によって圏外時でもセキュアな状態に保つ工夫がされています。詳しくはぜひ会場でご確認ください。こうした製品を見ると,一律に「持ち出し禁止」とせずに,社外での活用を再び検討してもよい時期にきているのではないかと思うのは記者だけではないでしょう。Security Solution 2009に足を運び,ぜひ展示やデモを体験して判断していただきたいと思います。