コミュニケーションについて書かれた本を読むと,「相手の話は最後までさえぎらずに聞こう」と書いてあることが多いようです。確かにこちらが要点を伝えようとしているときに,途中で違う話を持ち出されると,話が効率よく進みませんし,気分も悪くなってしまいます。しかしながら,ダラダラと長い話を聞かされるのも,それはそれで効率的ではありません。
私のところには,様々な提案が持ち込まれます。あるときは社員からの新しい施策についての提案だったり,またあるときは他社から協業についての提案だったり。
社長が相手なので,目いっぱいアピールしようという気持ちもあるのでしょう。何十枚にも渡るプレゼンテーション資料を用意し,最初から最後まで力を込めて話をしてくれるのは,気持ちとしてはありがたいのですが,やはり効率的ではありません。私の仕事時間も有限です。限られた時間を有効に使い,できるだけ大きい成果を出したいと常々考えています。
話をさえぎるのは決して失礼ではない
相手の話が長くなりそうだと感じたときは,私はあえて話をさえぎらせてもらうことにしています。相手の話をさえぎって,質問をするのです。「すみませんがひとつ質問をさせていただいてよろしいでしょうか。今回の一番のポイントは何でしょうか?」
そうすると相手もポイントをシンプルに伝えようと努力してくれます。このミーティングの要点をはっきりさせることにつながりますから,その後はスムーズに話が進みます。
相手の話をさえぎるのは決して失礼なことではありません。お互いに限られた時間の中で,意見を交換し,理解し合い,よりよい課題を見つけていく。そのためにはむしろ,インタラクティブに進めたほうがよいのです。
ただし,いくつかコツがあります。私の思うポイントを3つご紹介します。
1.礼儀正しくさえぎること
話をさえぎるときに一番気をつけたいのは礼儀です。話をさえぎられてムッとするのは,無礼な態度を感じるからではないでしょうか。いきなりブチッとさえぎるのではなく,「すみませんが」「申し訳ありませんが」と,相手の目をよく見て落ち着いた口調で切り出せば,むしろ礼儀正しい人だと好印象を与えることもできます。
2.どこまで理解したかを伝えること
相手はこちらがどこまで理解しているかを知りませんから,端から端まで念入りに伝えようと頑張っていることがあります。また反対に,こちらが知っていると思い込んでいることがあるために,話を途中から切り出してしまうことがあります。こちらが理解しているのは何であるかを,こちらから自分の言葉で伝えることで,相手はずいぶん話しやすくなるのです。
3.効果的な質問を投げること
限られた時間で大きな成果を出そうと思うとき,常に意識しておきたいのはこのミーティングの目的は何であるのかということです。目的は何なのか,その目的に向かってお互いがどのような意見を持っているのか,その意見の背景にはどんな根拠があるのか。それを質問によって明らかにすれば,とても建設的で効率的な意見交換をすることができます。
繰り返しになりますが,相手の話をさえぎることは悪いことではありません。むしろ効果的な質問を投げかけてくれるほうが話しやすくなるのです。「聞く」ではなく「訊く」。興味を持って質問してくれるのは,相手にとってもうれしいものです。みなさんも上司の長い話には質問攻めで対抗してみてはいかがでしょうか。