前回は,あるSEマネジャから「私は部下が10数人いるがなかなか部下全員には目が行き届きません。何か良いやり方はないでしょうか」という主旨の相談を受けたのでそれに答える意味で,筆者が現役時代にその問題をどう考え,何を行ったかを説明した。そして,その中で当時筆者が使っていた個人別月間活動計画表を紹介した()。それにより,部下一人ひとりの仕事や研修,休暇が以前より漏れなく分かるようになり,部下の仕事の効率やSE同士のコミュニケーションも良くなった。そんなことを説明した。だが,この個人別月間活動計画表を作ったのにはSE一人ひとりの活動を把握すること以外にある目論見があった。それは“SEの仕事のやり方の転換”だった。今回はそれについて説明したい。

図●月間活動計画表
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SEは農耕民族

 営業担当者とSEは仕事のやり方/やらせ方が基本的に違う。営業は「今月何千万,何億円受注します」と上司に約束する。それを達成するために知恵と工夫を凝らして販売戦略を立て,顧客ニーズを把握し競合時の優位性なども考え,SEのサポートなどを得て提案書を作りプレゼンを行う。成約に向けて顧客の部課長と交渉する。ときには土下座しようが,自分が先頭にたってガムシャラに頑張る。その達成度は120%,100%,70%と数字で突き付けられる。目標が達成できなくても,言い訳も弁解もしない。営業はそんなふうに仕事をしている。彼ら彼女らの責任感と当事者意識は高い。

 一方,SEの仕事のやり方/やらせ方はそれとは違う。日本のSEの典型的な仕事のやり方/やらせ方は,次のようなパターンだ。上司や先輩がSEに仕事を与える。SEは「システム開発の○○」「インフラ構築の△△」など与えられた仕事を,与えられた人月で,与えられた期限までに一生懸命仕上げる。途中問題が起きても与えられた環境の中で昼夜を問わず頑張る。紆余曲折があれば誰かが助けてくれる。そして期限までに仕事を何とか終える。すると「良かった。何とか出来た。自分は頑張った」と思い,達成感を味わう。SEの仕事のやり方は大体こんなパターンだ。

 このようにSEの仕事は,与えられた世界で仕事をする受け身のスタイルである。受け身であるために,プロジェクトがうまくいかなかったら(ちょっと言いすぎかもしれないが)「営業が無理な条件で受注したからだ」「顧客が協力してくれなかった」「パートナのスキルが十分ではなかった」「プロマネがやり方を間違えた」などと他人の責任にするSEが少なくない。営業がひたすらビジネスという目標を先頭に立って追いかける狩猟民族だとすれば,SEは与えられた環境の中でひたすら頑張る農耕民族とも言えよう。