「データセンターなどのサービス事業者に、SaaS型データ・リカバリ・サービスに必要な当社製品を無償に近い形で提供する」。

 データ・リカバリ・ソフトを販売するファルコンストア・ジャパンの山中義晴社長は2009年6月、日本でのSaaSビジネス立ち上げ策を打ち出した。サービス事業者にSaaSビジネスのメリットについて体感してもらう。「SaaSは儲からない」とみる向きもあるが、経験してみなければ、その良し悪しや、ビジネスの難易度は理解できないだろう、というわけだ。

 「無償に近い形」というのは、レベニュー・シェア型でライセンス料金を設定していることを指す。ファルコンストアはサービス事業者のデータセンターに同社製品を導入するが、その時点ではライセンス料金を請求しない。その代わり、サービス事業者は同サービス開始後、売り上げの一部をファルコンストアに支払うというモデルである。

 ユーザーにとっても、ソフト導入で発生する数百万円から数千万円の初期コストをSaaSで解消できる。「ライセンス料を経費化したいユーザーは多く、SaaSは有効な提案だ」と山中氏は期待する。そのためにも、実際にサービスを提供するサービス事業者を早期に増やしたいところだ。

 データセンター事業者には、ソフトだけでなく、データセンター運用や課金などのノウハウも、原則として無償で提供する。これらは、ファルコンストアが台湾の通信事業者向け案件などで得たものという。すでに複数のサービス事業者と事業化の検討に入っており、100社のユーザー獲得を目標に、1社あたり200Gバイトのストレージ容量を用意した事業者もあるという。

取り残される中小プレイヤー

 SaaS基盤の提供やSaaSで提供するアプリケーションの品ぞろえなど、ITベンダーや大手ITサービス会社では、SaaSビジネスへの取り組みが活発化している。その一方で、中堅・中小ITサービス会社やソフトベンダーの多くが、収益を確保できそうなビジネス・モデルを描けず、尻込みしている。

 ソフト販売というモデルの限界も見えてきた。ファルコンストアのデータ・バックアップ・ソフトの売りは、バックアップやリカバリが短時間でできることという。BCP(業務継続計画)に対する意識が高まったことで、ソフトの売上拡大を期待したが、思うようには伸びなかったという。

 山中氏は新しい提案と新しいパートナーで、これまで狙えなかった顧客層を狙う。「大手でも、リカバリ・ソフトの利用は基幹系システムがもっぱら対象で、CADやメールなどに適用している例はまだ少ない。部門サーバーもこれからという状況だ」と、現状を分析する。中堅・中小企業分野での需要にも期待している。