皆さんの職場には、元気がありますか。景気の低迷から、職場に元気がなくなり、聞こえてくるのは文句や愚痴ばかり、という状況ではないでしょうか。そんなとき、一気に職場が明るくなるような言葉があったら素晴らしいですね。今回は、そんな言葉を集めてみたいと思います。

やっぱり挨拶は大事だ!

 社会人なら、職場で挨拶しない人はいないでしょう。ただし、小さな声で「おはようございます」と言っているようでは、元気が出ませんね。つい最近、筆者には、元気に挨拶すると、その日1日を元気に過ごせることを実感した出来事がありました。

 それは、ある商事会社の新人研修で講師をしたときのことです。元気な挨拶を徹底している会社のようで、講義の始めに日直さんが号令をかけると、全員が目一杯大きな声で「よろしくお願いします!」と挨拶します。声の大きさに圧倒された筆者は、いつも以上に「今日は頑張るぞ!」という気持ちになりました。さらに感動したのは、筆者が「○○ですね?」と問いかけると、新人さんは必ず「ハイ!」と返事をしてくれます。元気な挨拶と返事のお陰で、その日の講座は、とても活気のあるものとなりました。

 もしも皆さんの職場に元気がないなら、挨拶と返事の声を大きくしてみてはいかがでしょう。誰かが率先して大きな声を出せば、それが次第に職場全体に広がって行くはずです。些細なことかもしれませんが、大きな声が職場を元気にしてくれるはずです。もしも業務改善に関する会議があったら、「大きな声を出そう」という提案をしてみてください。

美しいソースコードだね!

 人は、ほめられると元気になるものです。誰だって、ほめられれば嬉しいでしょう。やる気が出ます。皆さんは、職場の仲間や部下をほめていますか。「そう言えば、しばらく人をほめたことがないなぁ」と思ったら、さっそく明日から、1日1回誰かをほめるように心がけてください。ほめられた人は、別の誰かをほめるでしょう。それが職場に広がって、とってもよい雰囲気になるはずです。

 ITエンジニアをほめるなら、「美しい」という言葉を使うことをお勧めします。ITエンジニアには、芸術家のような感覚があります。自分が作ったシステムを芸術作品のように思うことがあるのです。その作品を「美しい」とほめられれば、きっと嬉しい気持ちになります。もっと美しい作品を作りたいと思って、より一層仕事に励むでしょう。

 「美しい」というほめ言葉は、便利なものです。システムの内容がわからなくても、使える言葉だからです。逆に「よくできている」などとほめたら、「何を偉そうに、内容もわからないくせに」と反感を持たれてしまうかもしれません。「美しい」という言葉なら、「内容はよくわからないが機能美を感じる」というニュアンスがあるのでOKなのです。

 たとえば、プログラムを作っているITエンジニアがいるとしましょう。その人のソースコードを眺めて「○○君のプログラムには、美しさを感じるね!」とほめるのです。ITエンジニアは、照れくさそうに笑ってくれるでしょう。「美しい!」と言われたことが、嬉しいからです。もしも、筆者が「矢沢さんのプログラムは美しい!」と言われたら、いつもより2割り増しぐらい気合を入れて仕事しちゃいますよ。

お客様がほめていたよ!

 ほめ言葉をお世辞だと思わせない秘策があります。それは、間接的にほめることです。自分ではなく、誰か別の人がほめていたと言うのです。たとえば、「○○君のプログラムには、美しさを感じるね!」というほめ言葉は、言い方によってお世辞だと思われる恐れがありますが、「○○君のプログラムには美しさを感じる、と△△さんが言っていたよ!」というほめ言葉なら、がぜん信憑性が増します。

 誰が言っていたのかも、ほめ言葉の重要なポイントです。後輩が言っていたというのでは、あまり嬉しくないかもしれません。ベテランITエンジニアが言っていたというのなら、とっても嬉しいはずです。ほめられた本人が、当のベテランITエンジニアに「ボクのことほめていたのですか?」と確認することはないので、どうぞご心配なく。

 お客様がほめていたという言葉も、とても効果があります。これなら、プログラムが美しいだけでなく、どんなことにでも当てはめられます。たとえば、お客様との打ち合わせの後で「○○君は若いのに堂々と発言して素晴らしい、とお客様がほめていたよ!」と言われれば、とっても嬉しい気持ちになるはずです。ほめられた人は、次の打ち合わせで、お客様に最高の提案をしようと張り切るでしょう。

 間接的なほめ言葉はとてもよいものですが、間接的に相手を否定する言葉は最悪です。それを聞いた相手を、深く傷つけるでしょう。「○○君のプログラムは汚いなぁ」と言われたら、笑って済ませられますが、「○○君のプログラムは汚い、と△△さんが言っていたよ」と言われたら、とっても嫌な気持ちになります。さらに「○○君のプログラムは汚い、とお客様が文句を言っていたよ」と言われたら、仕事を辞めたくなってしまうかもしれません。間接的に相手を否定する言葉は、決して使わないようにしましょう。

職場でギャグは是か非か?

 筆者は、常々「ギャグが職場を元気にする」と思っています。これに関しては、否定的な意見が多いこともわかっています。「親父ギャグは、仕事への士気を低下させる」「大事な会議でギャグが出ると、参加者の集中力が途切れる」という記事を、どこかで読んだことがあります。それでも筆者は、職場にギャグが必要だと思います。ITエンジニアは、頭脳労働です。ときどき頭をリラックスさせるために、ギャグが役立つでしょう。

 タイミングのよいギャグなら、職場を元気に明るくしてくれるはずです。会議の席で意見を求められたときに、ギャグを言うのはよくありませんが、会議を中断して休憩するときに、気の利いたギャグを言えば、その場が和むでしょう。ギャグが、仕事に緩急を付けてくれるはずです。頭脳労働には、緩急が必要です。そうしないと、頭が焼きついてしまうからです。

 駄洒落のギャグなら、誰にでも簡単にできます。たとえば、会議が休憩となるときに、議長が何か丸いものを出して「ここで休憩(球形)にしましょう」と言ったらどうでしょう。緊張が緩んで、おだやかな休憩時間になるはずです。ただし、休憩を終えて会議を再開するときに、議長が「それでは、会議を横浜ベイスターズ、いやいや再開します(最下位:現時点で、横浜ベイスターズは、プロ野球セリーグで最下位です)」と言ったらどうでしょう。参加者がずっこけて、気合が入りませんね。ギャクは、ダイミングが重要なのです。

 さて、今回も筆者の本棚から本を1冊紹介しましょう。ギャグ関連の本で「漫才入門(元祖爆笑王編)」です。専門学校東京アナウンス学院・芸能バラエティ科で行われた特別授業を元にして、漫才のストーリーの作り方を真面目に解説したものです。受講者が作った漫才作品の紹介もあります。ギャグが好きな人だけでなく、人を笑わせるのが苦手な人にもお勧めの本です。

書名:漫才入門
編者:元祖爆笑王
著者:元祖爆笑王・松本哲也・大隈一郎
発行:株式会社リットーミュージック
ISBN:978-4-8456-1596-4

 この連載では、皆さんからのコメントをお待ちしています。職場を元気にする言葉を教えてください。自分の会社で聞いた言葉でも、よその会社で聞いた言葉でもOKです。もちろん、ギャクも大歓迎です。よろしくお願いします。