前回は,どの会社でも通用する仕事術を構成する7つの力のうち,「教える」をテーマに9の重要項目を説明した。7つの力は以下の通りである。

(1)教える
(2)マネジメント
(3)仕事を頼む
(4)交渉する
(5)文章を書く
(6)褒める
(7)叱る

 「教える」力は,どの職場でも必要であり,身につけると非常に有利になる。ぜひ,実際に試していただきたい。
 
 今回は,2つめの「マネジメント」を取り上げる。これも,どの会社でも使える重要な仕事術である。ここでは,マネジメントを「チームでの協業作業や関係者に依頼した作業などの仕事を進めるために行う管理作業」と定義する。例えば,仕事の目標設定,作業の定義と責任分担,進捗確認などが該当する。以下,この前提で説明を進めていく。

仕事がうまく行かない人は「ネガティブ特性」を持つ

 筆者は,会社で教育担当を長く務めている。10年前からは教育コンサルタントの仕事もしている。このため,以前から仕事上の悩み相談を受ける機会が多かった。

 筆者に相談を持ちかける人のほとんどは,仕事がうまく行かないことに悩んでいる。そうした人たちの話を聞いたり,仕事のレビューをしていくうちに,彼ら・彼女らが共通する特性を持つことに気付いた。「やることが雑」「約束を守れない」「理解が浅い」「早合点」「あきらめが早い」「細かいことに頓着しない」といったものだ。

 これらは,仕事にマイナスの影響を与える特性と言える。社会人生活が長かったり,部下を指導した経験が多い人であれば,このことをお分かりいただけると思う。

 筆者は,こうした特性を「ネガティブ特性」と呼んでいる。ネガティブ特性を持つ人から相談を受けた場合は,出来るだけ早く矯正した方がよいとアドバイスするよう心がけている。
 
 読者の中には,「ネガティブ特性が,常に仕事に悪影響を与えるわけではないのでは」と考える方がいるかもしれない。例えば「細かいことに頓着しない」という特性は,「さっぱりとした性格」「ネチネチしない」という仕事にプラスの影響を与える「ポジティブ特性」にもなり得る。

 しかし筆者の経験で言えば,仕事が成功するかどうかは多くの場合,「約束を守る」「早めに動く」「粘る」「慎重に考える」といったネガティブ特性とは逆の特性をもつ人が適切に動くかどうかにかかっている。仕事を成功させるためには「ネガティブ特性を持たないメンバーをいかに集めるか」がカギを握ると,筆者は考えている。それが無理なら「ネガティブ特性」を排除するよう指導しつつ,正しくマネジメントを進めるようにしている。

ネガティブ特性がマネジメントの緩さにつながる

 「約束を守らない」「忘れっぽい」「理解が浅い」「表面的に解釈する」といったネガティブ特性を持つ人が仕事をマネジメントすると,必ずといってよいほど仕事が遅れたり,仕事の品質が悪くなったりする。例えば,他部門に仕事を依頼した場合に「いつまでに」「どのような形式で」「どんなレベルで」などを明確に告げずにあいまいに依頼してしまい,成果物の質が悪くて役に立たない,といったことが起こる。 

 これは,依頼する側,つまりマネジメントする側の仕事が“緩い”からである。ここでいう緩いとは,しっかりしていない,押さえが効いていないという意味だ。筆者は緩いマネジメントが仕事を失敗させる大きな原因だと考えており,これをいかに撲滅するかを強く意識して行動している。

 緩いマネジメントを防ぐには,どうすればいいだろう。筆者は,緩いマネジメントを排除するための習慣を8つにまとめ,チームメンバーや部下に徹底している。

緩いマネジメントを防ぐ8の習慣


(1)設定した目標を安易に下げない
(2)どの作業を誰の責任で行うかを常に明確にする
(3)本当の進捗状況が分かるように具体的に質問する
(4)問題を正しく認識できる聞き方をする
(5)状況把握と問題解決の話し合いを一緒にしない
(6)問題を正しく特定する
(7)問題や作業遅れが生じたときに,いつまでに対応するかを日付単位で管理する
(8)解決策を関係者で共有する