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「ガラパゴス化」とは悪いことなのか

2009/05/13

 「超ガラパゴス研究会」。NPO法人ブロードバンド・アソシエーションが2009年4月に立ち上げた「IT国際競争力研究会」の俗称である。「日本の優れたIT関連商品やサービスが,なぜグローバル市場で競争力を持たないのか」をテーマに,その原因究明と解決策の提案を目的として設立された。2009年中に提言をまとめるそうだ。

 委員長には,iモードの産みの親として知られる夏野剛慶應義塾大学特別招聘教授,委員には経済産業省の村上敬亮商務情報政策局メディア・コンテンツ課長,村井純慶應義塾大学教授のほか,コンサルティング会社,証券会社,通信事業者などの研究者や幹部などが並ぶ。すべて個人としての参加であり,所属企業の代表という立場ではないという。

 ガラパゴス化とは「日本企業の技術やサービスが独自の進化を遂げた結果,世界標準とは別なものになった」という現象を指す。その例の最たるものは,携帯電話端末だという。世界市場における日本メーカーのシェアは合計10%程度だが,その実態はほぼ国内販売だけ。輸出は限りなくゼロに近い。情報通信関連の端末や機器をみても,輸出比率は極めて低い。

 だが夏野氏は「特異な進化を遂げたことは,競争力があるという意味でもある」とする。強みを明確にすることができれば、必ず日本の商品やサービスは世界に羽ばたけると信じているという。だからこそ,グローバル市場で競争力がない原因を突き止めようというのだ。

 メンバーの1人である日立コンサルティングの芦辺洋司取締役は,ガラパゴス化の要因として,「日本企業が新市場において,急成長する国内需要にばかりに目を向け、外需(グローバル市場)への展開を怠っていること」を挙げ,さらに「国内ユーザーの高度な要求ばかりを見ているために,商品やサービスが進化しすぎる傾向がある」と指摘する。

 結果として「国内企業が国内でシェアを競っている間に,海外では日本と異なるデファクト・スタンダードが現れ、拡大発展していく」という事態になる。「気がついた時には、日本は世界標準から大きく取り残されている。外需に目を向けても、既に時期を逸している」のだという。

日本の商品は日本でしか使えないのか

 しかしその芦辺氏も「180度視点を変えてみれば,ガラパゴス化は日本が世界に飛躍する絶好のチャンスになる」と語る。

 例えば「そもそも,グローバル規模で拡大する市場に内需・外需の別はないはず。そう考えれば,日本は競争力のある商品を開発するのに絶好のマーケットと言えるかも知れない」という。また,商品/サービスが進化しすぎる,という点については,「日本企業には,日本のユーザーの高い要求水準を満たす商品/サービスを開発・提供する力がある」と考えられるという。

 標準化の動きから取り残されていることについては,「日本で培われた商品やサービスでデファクト・スタンダードをとりにいくべき」とする。ガラパゴス化は日本発の新しいスタンダードを世界へ発信するチャンスだというわけだ。「日本の動きは先進的であり,未来の標準である」という考え方である。

 もちろん,視点を変えるだけでは問題は解決しない。芦辺氏は「日本独自の商品やサービスをグローバル市場に展開するためには、これまでのような成り行き任せではなく、意識して能動的に動くべきだ」と指摘している。

 ちなみに,ガラパゴスには「よいガラパゴス」と「悪いガラパゴス」があるのだという。現状はローカルな技術であっても,グローバル展開できるような技術革新を遂げてきたかどうかが境目になるらしい。日本のIT産業が悪い方になっていないことを祈る。

■変更履歴
公開当初,夏野剛氏の名字を誤って夏目と表記していました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2009/05/13 16:00]

著者プロフィール

田中 克己(たなか かつみ)
 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。  30年にわたりIT産業の動向をウォッチし、現在は日経コンピュータで「再生の針路」を連載中。主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路〜破壊的イノベーションの時代へ〜」(ともに日経BP社)がある。

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