「私は今の会社に新卒で入社し,SEを7年やっています。これまでアプリケーション開発やインフラ導入などの仕事を一生懸命やってきましたが,最近転職したいと考えています。今の仕事で使うのは,古いIT技術ばかりなのです。このまま続けているとSEとして取り残されそうですし,昇進や給料もあまり期待できません。自分の将来にも不安を感じています。一方で,転職してもそこでしっかり仕事ができるか不安もあります。馬場さんはどう思われますか?」。こんな相談を,あるSI企業の30歳くらいのSEから受けた。

 IT業界は,今は不景気で転職するのは容易ではないとは言え,SEや営業,管理職など転職する人は少なくない。自分の能力をもっと生かしたいとキャリアアップを考えて転職する人,今の仕事に不満があって転職する人,給料など処遇面に不満があって転職する人,会社の将来に不安を感じて転職する人,仕事が合わなくて転職する人,上司や仲間が気に食わなくて転職する人などいろいろだ。そこには人それぞれ様々な事情があるのだろう。

 また,IT業界では,外資系企業をはじめ中途採用をする会社が多く,人材紹介会社の転職セミナーも盛んだ。転職雑誌もある。そんな状況を見ると,自分は転職しても何とかなると考えやすいし,仕事や処遇面を他社と比較することもできる。そんな環境も,SEや営業の転職を後押ししているように,筆者には見える。

 だが,転職してキャリアを伸ばした人もいれば,そうでない人もいる。その道は平坦ではない。中途採用者の履歴書を見ると,数年ごとに転職している人は少なくない。中には数カ月ごとに会社を替わっている人さえいる。日本では,転職は人生の一大重要事である。親も家族も心配する。景気の良いときは何とかなっても,今のような不景気になると大きな壁にぶつかりかねない。質問者の方も,それで悩んでいるのだと思う。そこで今回は,質問に答える意味で30歳前後までのSE向けに若手・中堅SEの転職について筆者の考えを述べたい。