マネジメント
IT法務ライブラリ

個人情報の取り扱いをめぐる法律問題[4]個人情報取扱事業者の損害

 前回まで,個人情報取扱事業者に課せられる注意義務の内容等について言及しました。今回は,個人情報漏洩事故が発生した場合,個人情報取扱事業者にはどのような損害が発生するのかについて検討してみます。

個人情報取扱事業者に発生する損害の種類

 個人情報取扱事業者が個人情報を漏洩させてしまった場合,どのような損害が発生するのでしょうか。このような場合に考えられる損害としては,以下のようなものが考えられます。

(1) 漏洩事故の被害者となった個人からの慰謝料請求
(2) 被害者となった個人への金券,商品券等の交付
(3) 個人情報管理業務の委託先との契約解除又は契約更新の拒絶による減収
(4) 事故処理に関わる人件費
(5) 株価の下落
(6) 風評被害

 皆さんが真っ先に思い浮かべる損害は,(1)の被害者となった個人からの慰謝料請求ではないかと思いますので,まず,(1)の損害賠償請求について,実際の裁判例を参照して検討したうえで,実務上,影響の大きい(2),(3)の事項についても検討してみようと思います。

慰謝料請求額はどのように決められるのか

 (1)の慰謝料請求は,個人情報取扱事業者の注意義務違反により,情報が漏洩した個人のプライバシー権が侵害され,これにより個人が精神的な苦痛を被ったことを根拠とするものです。前述したTBC事件(東京地裁平成19年2月8日判決),YahooBB事件(大阪地裁平成18年5月19日判決)でも同様の構成が採用されています。では,慰謝料はどのようにして決定されるのでしょうか。

 これら二つの事件は,いずれも個人情報が漏洩した事故であるという点については共通していますが,慰謝料の金額は,前者が3万円,後者が5千円と開きがあります。なぜこのような違いが発生するのでしょうか。この点を検討するために上記二つの裁判例を比較してみます。慰謝料の算定根拠について,上記二つの裁判例は以下のように指摘し,ほぼ,同様の内容を考慮しています。

 [2009/02/26]

著者プロフィール

松島 淳也(まつしま じゅんや)
 静岡県浜松市出身。1995年3月,早稲田大学理工学部電子通信学科卒業。1997年3月,早稲田大学大学院理工学研究科修了。コンピュータグラフィックスを利用した医学用画像処理の研究に従事。1997年4月,富士通株式会社入社。マイクロプロセッサの開発,電子商取引システムの開発等に従事。2006年10月,弁護士登録,内田・鮫島法律事務所に入所。

この記事に対する読者コメント

コメントに関する諸注意 コメント投稿 コメント一覧