おそらく,インターネットの恩恵を受ける幸せなカップリングの好例のひとつに,「美味しいものを真面目に作っている生産者」と「真面目な生産者から美味しいものを買いたい生活者」が挙げられるでしょう。

 先日,経済産業省が推進している「にっぽんe物産市」の勉強会と事業推進懇談会に参加させていただきました。「にっぽんe物産市」は,同省が農商工連携事業の一環として進めているITを活用した地域の活性化プロジェクトです。

 全国各地から公募された30団体の地域エージェントが中心となって,それぞれの地域産品と生産者の活性化を図るのです。そして,もっと多くの個人や流通業者に知ってもらうために,統一的なネットコミサイトやショッピングモールを構築しようとしています。

全国から30の地域エージェントが選ばれる

 筆者はまず,全国から参加されている30団体の地域エージェントの皆さんにブログやメルマガ活用を伝える講師を務めました。青森県八戸市などの地域活性化プロジェクトで実績のあるデジタルメディア研究所主任研究員,亀田武嗣さんのご指名です。

 地域エージェントの顔ぶれを拝見しますと,生産者から,民間の流通業者,IT事業者,商工会議所などの公共団体までさまざまです。その上,活動の進展具合や,ITの活用度合いにもバラツキが目立つようではありました。しかし,私が講師を務めてきた数多くの勉強会の参加者と大きく違う点がありました。それは参加者の目の輝きでありました。

 きっと,地元生産者や産品に対する敬意と愛情がなせる技なのでしょう。さらには,国際競争の激化と大資本による流通寡占,さらには地域間格差の進行などで,日に日に深刻化する環境への危機意識も手伝っているのかもしれません。

東商ブランド教科書の4原則の3つを既に満たしている

 以前,このコラムでもご紹介しましたが,昨年,東京商工会議所の企業経営委員会で「中小企業のブランディング教科書」を作成するメンバーに参加しました。その結論は,1:限定性,2:ストーリー,3:こだわり,4:IT活用の4つが,ブランディングに欠かせないというものでした。

 しかし,残念ながら,国際競争と流通再編にさらされて,多くの中小生産者は名もなき下請け業者に甘んじています。ブロガーをはじめとするネット上の読者を感動させるだけの「こだわり商品」を生み出し,「こだわり」や「ストーリー」を語ることは難しいのが現状です。

 ところが,地域エージェントの人が発信を手伝っている生産者や地域産品はひと味もふた味も違うのです。まさに,その土地,その生産者でしか作り得ない商品であり,旬の時に限定数しか出回らず,しかもこれまで現地の知る人ぞ知る人だけが味わってきた逸品そのものなのです。

 さらに,寡黙な生産者たちの地道で真面目な日々の営みは,まさにブログを毎日読みたくなる,こだわりやストーリーの宝庫です。

 ですから,私の拙い講義の後で,名刺を交換した時にも,多くのみなさんが自分たちの仕事を熱く語ってくださいました。そして,地域のコーディネータたるもの,ブログで語るのにぴったりの「ひと,もの,こと」に囲まれて生業にしていることに気づいていただけたのです。