最近、ハードウエアが面白い。機能がどうの、こうのではない。コンピュータ・メーカーの戦い方が大きく変わりつつあるのだ。コモディティ化が行き着くところまで行き着いた感があったが、さらにその先があった。当然(というのは哀しいが)、富士通やNEC、日立製作所といった国産メーカーはビジネスの変化に対応できていない。どうする、日本のIT産業!

 ネタを先にばらすと、コンピュータ・メーカーのビジネスモデルを変えつつある要因は、クラウド・コンピューティングの勃興だ。圧倒的なボリュームでサーバーやストレージを調達する“クラウド事業者”の登場により、今までにないハード製品の企画、製造、販売のやり方が生まれつつある。なんせ相手は、サーバー数千台を四半期単位で調達するような超大口顧客。彼ら1社だけで巨大な市場だ。

 こうした超大口顧客は、要件についてはワガママで、お金については買い叩くものと相場が決まっている。そのため最近、コスト効率を追求したユニークなハード製品が多数登場してきた。例えば、何かと話題のコンテナ型データセンター。あれは、検索サービス事業者向けに「コンテナ単位でハード・リソースを増強すると効率的ですよ」と訴求する製品だ。

 そう言えば、つい先日もヒューレット・パッカード(HP)が、「1Gバイト単価が200円以下」というストレージを発売したが、これも動画サイトやクラウド事業者を主な販売ターゲットだ。200円以下と聞くと驚いてしまうが、実際に超大口顧客に売るとなると、この値段では済まないだろう。その半値あたりが相場かもしれない。

 で、ここからが問題。そうしたハード製品は特定分野の話であって、一般のユーザー企業には関係ない話のようにも思えるが、さにあらず。そもそも、こうした製品はコモディティ化した標準品、汎用部品の塊だ。それに超大口顧客の買い叩き効果で、強制的な原価低減が進む。その結果、一般のユーザー企業でも利用できる製品に化ける可能性も出てくる。実際、HPのストレージなんぞは、バックアップ用途などに使えそうだ。

 国産メーカーは、こうした製品を作れない。サーバーでもストレージでも、ボリュームをさばくコモディティ分野でまともなビジネスができていないので、当たり前と言えば当たり前だが。実際、特定の超大口顧客向けで存在感を見せるのは、HPやデルといったコモディティ分野での有力メーカーである。

 HPやデルは、コモディティ化したサーバーやPCなどを大量にグローバルで売りさばき、規模の経済を効かせてコストをどんどん切り詰めることができる。だから、5万円PCなんかも簡単に出すことができる。あれは世界規模で大量に売りさばいてこそ、利益の取れる製品だ。国内市場だけが頼りの国産メーカーでは、赤字を前提に売るしかない。