日本ユニシスの籾井勝人社長は11月7日、同社の2008年度中間決算説明会で、利益重視型への戦略転換を明らかにした。2005年6月の就任当初に、「売上高5000億円、営業利益300億円」という目標を打ち出した籾井社長だが、今回中長期の目標として掲げたのは、「営業利益300億~350億円、営業利益率10%」というものだった。短期および中期の営業利益率の目標については、従来と同じ6~7%とした。

 日本ユニシスの売上高はここ10年以上、3000億円前後で推移している(図)。籾井氏は3000億円の壁を突破しようと、「売上高5000億円」の目標を打ち出し、社内の意識改革に取り組むとともに、事業のグローバル展開やM&Aなど成長戦略を描いた。


図●日本ユニシスの業績推移
図●日本ユニシスの業績推移

 2007年のネットマークス買収や、2008年の印インフォシス・テクノロジーズとの提携なども、その一環として実行してきた。だが、2007年度の売上高(3377億円)は、期初に掲げた目標値3668億円を大きく下回るものだった。

 白鳥恵治代表取締役専務執行役員はその“敗因”を「契約をとりすぎ、身の丈以上の受注をしていた」と分析する。ただし、営業利益は期初の187億円を上回る196億円を確保。そして2008年度は売上高3450億円、営業利益220億円を見込むなど、利益アップを狙った戦略を練る。

このITサービスは今後も伸びる

 利益アップのカギは「ITサービス」だという。籾井氏はITサービスを「成長路線の核」と位置付けており、収益源にする考えのようだ。「市場予測などを見る限り、ITサービス分野は今後とも成長する」とみる。

 ここで言うITサービスとは、従来からあるアウトソーシングに加え、サーバーなどを預かるハウジング、日本ユニシスのサーバーを利用したホスティング、さらにSaaSなど、ストック型サービスを指している。現在、社内のリソースをこの分野にシフトさせている最中だ。

 計画では、上記のITサービスで3年後に300億円の売り上げを確保するという。一方、システム構築など事業は横ばいで推移するとみており、ストック型のサービスで売り上げを着実に伸ばしつつ、利益も確保する作戦だ。そのためには「運用・保守の技術に長けた人材が不可欠」(籾井氏)なので、ここの人材育成にも力を注ぐ。

 籾井氏は「営業利益300億~350億円」という目標の達成時期について、「そんなに遠い時期ではない。プロジェクトにおけるコストオーバーランは減り、内製化率も上がってきた。“埋蔵金”は結構ある」としており、数年以内とみられる。

 懸案の外注費については「2007年度は赤字案件があり、人件費が膨らんだ」(白鳥氏)ことから、2008年度には1割程度減る見込みだ。また2008年度の不採算分は36億円改善して14億円程度になる見通しである。「初期消火で、小火(ぼや)程度で済んでいるので、消火要員を減らして通常の開発に回せる。システム開発はすべてうまく回っている」(籾井氏)。

 不測の事態を減らし、安定度を高めることで稼働率を上げ、内製を増やす。「人は足りている。『足りない』と言ってくる人もあるが、2年半前に比べると、現場で直接開発に携わる社員の比率は高まっている」とし、籾井氏は企業体質のさらなる強化を続ける考えだ。