ネタが降って来たので,連続で書いてます。

 この連載でも「雑文」でも,最近のネタ元の多くはtwitterやIRCだったりします。ITproなこともあるのですが,他のニュースサイトやブログがネタになることはあまりありません。一応RSS feedはしているのですが,だんだん増えてしまって読むのに一苦労で放置しているということと,そういったまとまった文章を読むと,どうしても他人の意見に引っぱられてしまって「ネタ」として面白くないからです。

 そんなわけで,今回の話題はいわゆる「オープンソース貢献者賞」とは直接関係ありません。という一言を書くためにわざわざ調べまくったのは間抜けなんですが,書き始める前に「そう言えば最近だったよな」と思い出したのでした。

 今回のネタ元はtwitterでのある人の発言,「やっぱもっとオープンソースに貢献できる環境がいいのかなぁと,急に思ったり」を受けてです。個人的にはこの言葉で「オープンソースへの貢献って具体的に何?」ということを思ったことからです。「オープンソースへの貢献」というのは古くからよく言われることではありますが,具体的イメージとなるとなかなか難しいもので,古くて新しい,また永遠のテーマでもあります。

「オープンソース貢献者賞」での趣旨

 せっかく関連記事を探して来たので,「オープンソース貢献者賞」の対象について見てみます。

 実際にはいろいろ細かくあるのでしょうが,ITpro内の記事から。

PostgreSQLの石井氏,OSCの宮原氏,GRUBの奥地氏,Firefoxの中野氏に日本OSS貢献者賞

 この記事での表現を借りると,

「日本OSS貢献者賞」は影響力のある開発プロジェクトを創造・運営した開発者やコミュニティの活性化に尽力した人を表彰するもの。

 ということになっています。IPA自身での説明は,

「日本OSS貢献者賞」は,2005年度に日本OSS推進フォーラムとIPAによって創設された賞であり,日本におけるOSS開発の振興を図ることを目的に,影響力のある開発プロジェクトを創造,運営した開発者やグローバルプロジェクトにおいて活躍する卓越した開発者および普及に貢献した方を表彰するものです。

 となっています。具体的に今まで受賞した人を挙げると,

2005年
鵜飼 文敏(うかい ふみとし)氏:Debian Projectの主要メンバー
高橋 浩和(たかはし ひろかず)氏:Linux Kernel開発への参画
高林 哲(たかばやし さとる)氏:Namazu,quickml,gonzuiの開発/プロジェクト運営
まつもと ゆきひろ氏:Rubyの開発/プロジェクト運営

2006年
比嘉 康雄(ひが やすを)氏:Seasarの開発
平林 俊一(ひらばやし しゅんいち)氏:WideStudio/MWTの開発プロジェクト
山本 博之(やまもと ひろゆき)氏:Sylpheedの開発
吉藤 英明(よしふじ ひであき)氏:IPv6プロトコルスタック「USAGI」の開発

2007年
小山 哲志(こやま てつじ)氏:日本PHPユーザー会における技術者育成をはじめとしたOSS普及促進への貢献
笹田 耕一(ささだ こういち)氏:Rubyを高速化するシステムYARV(Yet Another Ruby VM)の開発をはじめとしたOSSへの貢献
佐藤 嘉則(さとう よしのり)氏:組込み向けCPUへのLinuxの移植をはじめとしたOSSへの貢献
松本 裕治(まつもと ゆうじ)氏:日本語形態素解析システム「茶筌(ChaSen)」の開発をはじめとしたOSSへの貢献

2008年
石井 達夫(いしい たつお)氏: PostgreSQLの開発,発展,普及に大きく貢献
奥地 秀則(おくじ ひでのり) 氏:ブートローダGRUBの主要開発者で,GRUB2では中心となって,設計・開発に携わる
中野 雅行(なかの まさゆき) 氏:Firefoxの開発にかかわり,日本語入力システムとの連携機能などの実装に貢献
宮原 徹(みやはら とおる) 氏:「オープンソースカンファレンス」を立ち上げ,中心的な立場で活動をリード

 となっています(どうでもいいことなんですが,IPAオープンソフトウェアセンターのサイトでは2008年の募集告知はあっても発表告知がありません。なので,2008年分については二次情報です)。

 「この人にこの賞」という観点で見れば,実績には申し分ありません。むしろどの人も「賞より実績の方が大きい」と言ってもいいでしょう。意地悪な言い方をすれば,どの人に対しても「今さら」感すらあります。この辺については受賞者の一人である奥地さんのブログに触れられています。

オレオレ日本OSS貢献者賞

 また,見方によっては,「開発者偏重」の謗りは免がれないようにも思います。とは言え,既に開発者だけでも「表彰バックログ」が大量に発生していることと,IPAという組織の性質から言えばしょうがないとも言えます。

 もっとも,これはあくまでも「賞」の話に過ぎませんから,そこに出て来ることだけが貢献だとは言えないということは,誰も納得すると思います。