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 昨今,インドの経済成長が大きな話題になっています。IT分野においても,インドの躍進ぶりは驚異的です。今回は,そんなインドと10年以上付き合った経験を基に,日本の読者に知っておいてもらいたいことをお話しします。見るもの,聞くもの,食べるものなど,あらゆる点で他のアジア諸国とは違うことを,ぜひ感じ取ってください。

 筆者が初めてインドに足を踏み入れたのは,1990年代半ば,日本市場でインドIT企業を活用する話が少し出始めた頃のことでした。社内で,インドの優れたソフトウエア技術を活用しようとの機運が高まり,インド・パキスタン・中東に強い上司のリードにより,インド活用の検討が進みました。

 当時,インド・プロジェクトをやりたがる人はいなかったので,筆者が手を上げました。それからインドとのかかわりが始まりました。

初めてのデリー空港で困惑

 初めてインドに出張し,デリー空港に着いたのは夜のことでした。夜もふけた空港の外に出ると,明かりが少なく,暗い背景に肌の黒いインドの人々の姿が溶け込み,きらめく目だけが光っているように感じて驚きました。今でもあの光景は鮮明に覚えています。

 当時デリー空港の建物や設備は古く,飛行機の行き先案内もきちっと表示されていませんでした。行き先表示機はありましたが,表示板は壊れて修理されておらず,パタパタと動いているだけで旅行客には役立ちませんでした。そこで,同じ行き先の搭乗券を持つ人が集まっている搭乗口近くの列について,搭乗案内を待っていました。インドはヨーロッパにも近いので,馴染みのないヨーロッパの都市行きのフライトがありました。誤って乗ってしまう危険が感じられたので,搭乗の際,係員に間違いないかよく確認していたものでした。